2014-01-01から1年間の記事一覧

ある日の柳田国男と折口信夫の沈鬱な会話

戦後(太平洋戦争後)のある日、柳田国男と折口信夫のこんな会話を岡野弘彦が伝えている。 敗戦後、折口信夫は成城に柳田国男をたずねた。 そして二人の間にこういう話が交わされた。 「ねえ折口君、こんどの戦争でつくづく感じさせられたのだが、日本人のよ…

遊説中、かたや人助けで落選、かたや事故をスルーして当選

まことに対照的な出来事が起きたもんだ。 民主党の候補者が<衆院選>遊説中に人助け この候補者は落選する。 他方、自民党は「山田美樹氏:運動員人身事故、近くで演説」となる。 この議員は海江田万里を破る金星を射止めた。 人命に対する両党の立ち位置を…

ユナボマーの肉声インタビュー

ISISに参加する若者の先駆者ともいうべき「反文明論者」にしてテロリスト。ユナボマー。セオドア・カジンスキーは有望な若手数学者であり、カリフォルニア大学バークレー校の教員だった。 それが一転、モンタナ州の山奥に隠棲し、やがて、金融機関に爆弾を送…

ハンカチーフの日本文学の近代

日本でハンカチーフが市民に浸透した頃合いはいつになるのあろうか? 文学的な記録から辿ろう。 宮本百合子は昭和初期から活躍したプロレタリアート側の文学者であるが、その名も『デスデモーナのハンカチーフ』でハンカチーフを主題とした小編を書いた。 オ…

安曇磯良とデイビー・ジョーンズ

海のそこの異形の神「安曇磯良」(あずみいそら)は海人族の神として知られる。「細螺石花貝藻にすむ虫、手足五体に取り付きて、さらに人の形にては無かりけり」と「太平記」には記される。安曇族の祖形神、あるいは戎=蛭子信仰の発生地点におわす霊なのだ…

八幡古表神社の傀儡子相撲

日本民族は不思議な民である。傀儡子の伝統を今に受け継ぐふるさびた芸能がここかしこに残存するのだ。 八幡古表神社の傀儡子の相撲の映像を見ていただきたい。 なんとも古めかしく侘び寂びた神事であろうか。 相撲は神事であるから、それも神の御前での奉納…

自民党殿には政権からお引取り願いたい 

望むらくは自民党殿には政権の座からお引取り願いたいものだ。反自民ではないがそのやり口には虫酸が走ることがある。ここではガス抜きさせていただこうか。 国家財政を悪化させるような財政的ドーピングで一時的株高をもたらし、消費税値上げ分を意味もなく…

司馬遼太郎も過つ

弘法も筆の誤りではないが、司馬遼太郎もその膨大な著作や講演録で過ちをおかしている。 例えば、1994年の自衛隊での講演『ノモンハン事件に見た日本陸軍の落日』では ノルマンディーの連合軍上陸地点をロンメルが見過ごしていたと語っているが、実はロ…

幕末の神道思想家 鈴木重胤

『古事記伝』の本居宣長の影に隠れているが、その業績に比較されるべき「日本書紀」の研究を行ったのが鈴木重胤であった。折口信夫はその影響を大きく受けている。 折口信夫の評価を聞こう。『神道に現れた民族論理』ではこう評価している。 鈴木重胤などは…

故 藤森栄一氏の旧宅

長野の考古学を高みの導いた藤森栄一氏はこのあたりにお住まいがあった。 ここはJR上諏訪駅から近い。 国道20号線から一本奥に入った場所だ。今は誰が住んでおられるかわからないが、瀟洒な住宅がある。 終生在野の学者であった氏は、諏訪中学卒以来、諏訪を…

 大和の古墳の古代ローマ帝国製ガラス皿

11月14日付のNews「奈良で出土の皿、ローマ帝国から? 化学組成ほぼ一致」が古代史ファンの注目を集めている。 奈良県橿原市の新沢千塚古墳から出土のガラス皿がローマ帝国製のガラスの化学組成と一致したのだ。 これは、稀有な遺物であるが、突然に湧きでた…

豊国大明神の誕生

豊臣秀吉が死後、豊国大明神となったが、それは前例のない出来事と史家がいう。 徳川家康もそれを真似てか、死後東照大権現として神に祀られる。 実はイエズス会の諜報網は秀吉の死が公表される前に、「新八幡」として祀られることを策動していたとローマに…

石神信仰から石合戦へ

柳田国男と関係者の往復書簡集の『石神問答』はたびたび取り上げたが、その主要な問答相手の山中共古は、クリスチャンにして旧幕臣でありながら、山梨県の民俗の研究に余生を捧げた。 山梨県にあってその影響下にあったのが、中沢厚である。中沢厚は『つぶて…

縄文信仰に連なる書物の連鎖

藤森栄一は長野考古学の父というべきヒトであるが、『信濃の美鈴』と『縄文の八ヶ岳』で縄文後期の特異な土器を検討した。 この奇怪な精神的な造形を縄文末期の複雑な時代背景にあると藤森栄一は論じている。 その50年前に柳田国男が『石神考』を思想界に投…

女のすなる紀行文

イザベラ・バードの『日本奥地紀行』や『朝鮮紀行』が静かなブームのようだ。確かに、19世紀に世界を股にかけて旅行したイギリス人女性の胆力や観察力にはおどろくべきものがある。 そうは言いつつ、日本のほうが女性の紀行文の歴史は古いのは間違いないだ…

われらの内なる古代人

鶴見和子が柳田国男の評論で「われらのうちなる原始人」と指摘した。レヴィ・ストロースの「われらの外なる未開人」の対比で彼女がもちだしたのだ。 柳田民俗学のひとつの特徴を言い当てている。柳田の常民は、しかし、「原始人」というより「温順な中世人」…

鎌倉御霊神社の奇祭 非人面行列

御霊神社の例祭(9月18日)のメンイベント。 面掛け行列の内訳は、鬼や異形、烏天狗、爺などの非人の仮面だ。それら10面が10人となり、町中をねり歩く。 中世都市鎌倉ならではのお祭である。 中世の神人たちの放生会の行列のなごりというが、すぐれて…

人形の絶対性 文楽

七年前のことです。四国の淋しい路傍で最も神秘な傀儡師を見ました。至妙な演戯よ! 私の心は涯もない夢幻の奥へ誘はれてゐたのです。けれども終生忘れることのできないのは(そして彼は暫く深々と感動の瞑目をつづけてゐました)ふと自分に返つたとき、芝居…

身辺文化の起源

例えば、フィギュアのもとは奈良平安期のヒトガタにある。土偶はその偉大な先祖であるとしてもいいだろう。サブカル全体に関して、西洋的な大量消費社会の衣の下に中世から江戸の大衆文化が鎮座しているのではないだろうか。 洒落本はラノベ、コミックは浮世…

親鸞と唯円の或る日の対話

『歎異鈔』を書いた唯円はそんな本を書くくらいだから相当に師の親鸞を理解していた。或る日、こう尋ねた。 「阿弥陀如来はイヤダイヤダと拒んでもお救いくださる。そうなると欣喜雀躍したくなると『阿弥陀経』にありますが、自分にはそれが判りかねます」 …

ユルスナールの訪日経験

1982年日本が経済的な栄華の夢に浸っていた頃、特異な芸術家が訪れた。マルグリット・ユルスナール。 女性ではじめてのアカデミー・フランセーズに迎えられた小説家である。 かねてより「源氏物語」と三島由紀夫の国に憧憬をもっていた彼女は79歳になって…

龍と天災

中世人は猛威を奮う風雨に龍王の姿を見ていたようだし、地震や火山噴火も龍動と呼んでいた。 竜巻は中世人の見立ての残滓だろう。 地下の穴にすむ龍が何かの機会で突如暴れだす、それは政道の乱れへの怒りからかもしれない。あるいは不敬の振る舞いへの祟り…

ゴジラはなぜ南の海からやってくるか

ゴジラはマレビトだから。トシドンやアカマタ・クロマタと同類だから。厄を落とし福をもたらす守護神だからだ。南島の来訪神なのだ。 戯言だと思って読んでいただこう。折口信夫の沖縄体験はその民俗思想の展開に深い刻印を残した。その一つがマレビトだ。 …

初めての奇人伝

自分にとっての初めての奇人伝は澁澤龍彦による「呪われた詩人たち」の紹介であった。フランスのデカダンを体現した一連の奇矯なる詩人たちの逸話と生涯は、まことに驚きそのものであった。 シャルル・クロス、ボレル、フォルヌレ、アルフォンス・カルなど個…

香港の民主化デモ 自分ならこう潰しにかかる

仮に自分が香港の権力側だとしよう。仮に長官だとしてもいい。 今回の民主化デモ『傘の革命』をどう潰すかを考えてみよう。まずはじめに、前提をおさえておこう。 民主化要求を鵜呑みにすれば、権力側は面目が立たない。それどころか、今後の中国本土への同…

古代の日本と朝鮮の架け橋 瓢公

新羅の創設期に登場する謎の人物がいる。瓢公(ここう)である。 この人物は多婆那国(たばなこく)の倭人であるとされる。その地は丹波国もしくは但馬国であるとされる。 多婆那国の当て字と読み方が万葉仮名に似ていることは偶然ではないであろう。 朝鮮三…

自動販売機たちの呼声

自動販売機をクール・ジャパンのネタとすることはできないだろうか? 日本は自動販売機大国である。その種類や数量、それに投入された技術力は半端ではない。 例えばである。 自動販売機の売上は清涼飲料水メーカーにとって生命線である。それゆえにかなりの…

天才ギタリスト伝説 ジャンゴ・ラインハルト

ジャンゴ・ラインハルト Django Reinhardtは1930年台のヨーロッパで名声をほしいままにした。彼の独自の奏法は右手の指の癒着とロマ族の天性に由来するのであろうか。 ジャンゴ・ラインハルトの伝説 音楽に愛されたジプシー・ギタリスト作者: マイケル・ドレ…

イギリスの大宰相

イギリスの大宰相といえば、William Ewart Gladstoneにまず指をおるだろう。 彼は大演説家でもあったが、奇しくもその音声はYoutubeに伝わる。 グラッドストーンの演説集(無料) グラッドストン‐‐政治における使命感作者: 神川信彦,解題:君塚直隆出版社/メ…

「小豆あらい」はなぜ妖怪をしているのか?

小豆あらいなる妖怪ほど酔狂な化け物は少ない。 ひとを驚かすのが何よりも楽しみな妖怪たちの中でも、食べ物を洗うだけのひたむきなヤツだ。 人の通りかかるのを待って、小豆を洗う音をたてる、その一点のみにおのれの全存在を投入しているのだ。 もちろん、…