2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

興亜観音に参る

熱海と小田原市の境のあたりに興亜観音がある。極東軍事裁判において有罪判決を受け、巣鴨プリズンにおいて絞首刑に処せられたA級戦犯にゆかりの礼拝専門の寺院である。 その人物が松井石根(元陸軍大将)であります。じつに、南京虐殺事件の責任をとらされ…

黄金バットの敵役 ナゾーの謎

往年のTVアニメファンなら『黄金バット』は知っていよう。その敵役のナゾーはなぜか四つ目であるが、いつもキメ台詞があった。「ローンブロゾー」 これは謎だったが、さる10月18日に解決を見た。 イタリアの犯罪人類学者であるチェーザレ・ロンブローゾの命…

法隆寺 聖護院前の大楠と中宮寺の亀

法隆寺に行った。世界最古のお寺。百済観音は別に語ろう。 聖護院前の大楠を撮った。聖徳太子の時代から生き残る、太子ゆかりの老樹である。 そして、中宮寺にも行った。聖徳太子の生母である母后穴穂部間人皇女(あなほべのはしひと)のために太子が創建し…

会津藩士 秋月悌次郎 

秋月悌次郎はNHKの大河ドラマ『八重の桜』でもほんのわずかしか出番が見られなかったが、それでも藩の知恵者として戊辰戦争での会津降伏での活躍や山川健次郎の育ての親的役割などはうかがい知れた。教育者として奥羽列藩同盟の立案者の一人として、戦闘の指…

職能民の変遷の一逸話

鎌倉時代の『東北院職人歌合』をみる。これは国の重要文化財であり、「東北院職人歌合絵巻」で詳細は見分できる。 ここからは網野善彦の孫引きとなる。絵巻では下図のように博打うちと巫女が対になっている。実は平安末期には国衙(地方官庁)が双六打(博打…

日本悲観論は正しくて、でも没落しない理由

人口減と少子高齢化、エリート層の質低下、国や自治体の財政赤字、技術開発力や研究力の崩壊、地震や火山台風などの被災増大などなど日本の先行きを危うくする「事実」が山ほどある。 しかしながら、他国が一緒に没落するならば、日本の将来はそうではなくな…

Erdstall『小鬼の穴』と伝承のミッシング・リンク

南ドイツからオーストリア、ハンガリーにわたる広い地域に700以上もの地下トンネルがある。エルドシュテーレと呼ばれる遺跡はそれほど古いものではない。10世紀から13世紀のあいだに人工的に掘られていることがわかっている。 日本でも知られるように…

伊奈波神社

岐阜市民の初詣といえば伊奈波神社だ。岐阜の三宮でありながら、なかなかの風格と気品を漂わせている。斎藤道三が稲葉山城の近くから、当地に移したそうだ。それ故、社殿としてはそれほど古くはない。 祭神は五十瓊敷入彦命(いにしきいりひこのみこと)との…

中世の僧兵の歓喜の叙情

『平家物語』での一挿話が記憶にある。平安時代の末期、京の貴族から武士に権力が移行してゆく時代である。 巻一にある延暦寺と興福寺の僧兵が争ったおりの勝どきの歌。 うれしや水、鳴るは滝の水、日は照とも絶えずとうたへ と観音房と勢至房が囃す。 これ…

山下清の日記を読む

海外のアール・ブリュット作家はよく知らなけれど、山下清のように克明な日記をつけたアーティストは少ないだろう。『裸の大将放浪記』として国民的人気を呼んだのも珍しい。テレビドラマ化されてもいる。 句読点なしで漢字も少ない、その文章は単純ながら味…

伊勢の月読宮の印象

日本神話によれば月読命は天照大神と素盞嗚命と並んで三貴子の一人のはずである。でも記紀の扱いはそっけない。日月は大きな対立物であるのに、月読命はどこにも権力基盤を持っていないかのようだ。 そうとはいえども神の都を自称する伊勢は、弟分を疎かにし…

こんにゃく談義

味の達人、北大路魯山人は「 蒟蒻 ( こんにゃく ) をつくりあげた作家は、中国人にしても、日本人にしても、驚くべき創作家的料理人である」としている。直木三十五(直木賞の直木だ)は死ぬ前に、「食べ物では、今でも、食べたいと思うのは、 蒟蒻 」と記…