2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

人形の絶対性 文楽

七年前のことです。四国の淋しい路傍で最も神秘な傀儡師を見ました。至妙な演戯よ! 私の心は涯もない夢幻の奥へ誘はれてゐたのです。けれども終生忘れることのできないのは(そして彼は暫く深々と感動の瞑目をつづけてゐました)ふと自分に返つたとき、芝居…

身辺文化の起源

例えば、フィギュアのもとは奈良平安期のヒトガタにある。土偶はその偉大な先祖であるとしてもいいだろう。サブカル全体に関して、西洋的な大量消費社会の衣の下に中世から江戸の大衆文化が鎮座しているのではないだろうか。 洒落本はラノベ、コミックは浮世…

親鸞と唯円の或る日の対話

『歎異鈔』を書いた唯円はそんな本を書くくらいだから相当に師の親鸞を理解していた。或る日、こう尋ねた。 「阿弥陀如来はイヤダイヤダと拒んでもお救いくださる。そうなると欣喜雀躍したくなると『阿弥陀経』にありますが、自分にはそれが判りかねます」 …

ユルスナールの訪日経験

1982年日本が経済的な栄華の夢に浸っていた頃、特異な芸術家が訪れた。マルグリット・ユルスナール。 女性ではじめてのアカデミー・フランセーズに迎えられた小説家である。 かねてより「源氏物語」と三島由紀夫の国に憧憬をもっていた彼女は79歳になって…

龍と天災

中世人は猛威を奮う風雨に龍王の姿を見ていたようだし、地震や火山噴火も龍動と呼んでいた。 竜巻は中世人の見立ての残滓だろう。 地下の穴にすむ龍が何かの機会で突如暴れだす、それは政道の乱れへの怒りからかもしれない。あるいは不敬の振る舞いへの祟り…

ゴジラはなぜ南の海からやってくるか

ゴジラはマレビトだから。トシドンやアカマタ・クロマタと同類だから。厄を落とし福をもたらす守護神だからだ。南島の来訪神なのだ。 戯言だと思って読んでいただこう。折口信夫の沖縄体験はその民俗思想の展開に深い刻印を残した。その一つがマレビトだ。 …

初めての奇人伝

自分にとっての初めての奇人伝は澁澤龍彦による「呪われた詩人たち」の紹介であった。フランスのデカダンを体現した一連の奇矯なる詩人たちの逸話と生涯は、まことに驚きそのものであった。 シャルル・クロス、ボレル、フォルヌレ、アルフォンス・カルなど個…

香港の民主化デモ 自分ならこう潰しにかかる

仮に自分が香港の権力側だとしよう。仮に長官だとしてもいい。 今回の民主化デモ『傘の革命』をどう潰すかを考えてみよう。まずはじめに、前提をおさえておこう。 民主化要求を鵜呑みにすれば、権力側は面目が立たない。それどころか、今後の中国本土への同…