2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

石川淳における江戸趣味とアナーキズム

怪作という名称にふさわしいのが『至福千年』だ。しかし、これこそ石川淳の作品としてはあまり陽の当たらないステロイド系ロマンなのだ。 幕末の江戸で飯綱遣いの神官が企てるキリシタン乞食革命。この神官こそは井伊掃部守の股肱、大久保の水稲荷の宮司加茂…

『シェラ・デ・コブレの幽霊』

『シェラ・デ・コブレの幽霊』(The Ghost of Sierra de Cobre)をテレビで観た生き残りの一人であります。 かつての切れ者同級生の吉田くんも動顛かつ感動してましたねえ。 やあ、怖かったですねえ。幽霊の描写がとてもとても怖かった。これぞ正統派ゴース…

ポータブル・ハードディスクの件

タイの大洪水の余波が自動車だけではなく、ITにも出てきた。ハードディスクの値上がりのニュースであります。2〜3割りくらい上昇しているらしい。 http://japan.internet.com/wmnews/20111028/4.html そろそろ潮時と考え、久々にポータブル・ハードディス…

たまたま遭遇したムード音楽を一つ

廃墟論の空疎さについて

谷川渥編の『廃墟大全』は廃墟論の名編と言っても過言ではない。 伝説の出版社、トレヴィルによる1997年の出版物である。当時、ゲームなどメディアのそこここに出現していた廃墟に着眼して、古今東西の廃墟にまつわる見識を総動員した力作である。 と同…

男装の女剣士 琴姫

あんれま、懐かしの『琴姫七変化』ではないですかあ! ボンカレーの松山容子さんが主演だったのですか。いやーこれはほのぼの系です。 フランスのロマン派に属する作家ゴーティエに『モーパン嬢』があります。これも男装の麗人が登場しますな。 新潮文庫なら…

ある物理オタクのうわ言

まったく、世の中、電子と光子にしか関心がないのは、おそろしく単眼的で嘆かわしい。科学と技術史のメインストリームは、信号を電子と光子に変換する、それだけじゃないですか。 太陽のエネルギーを利用するというても、しょせん電力に変換するだけ。光子の…

古いけど新鮮なマルセル・モイーズのフルート演奏

戦前に活躍した「フルートの神様」マルセル・モイーズ(Marcel Moyse)の演奏でごわす。 古さびたレコードからの採取でしょうか。

日本の中の朝鮮の旅人

金達寿氏は日本の中に埋もれた朝鮮の開拓者でありました。 彼の主著というべき『日本の中の朝鮮文化』シリーズは学問的にはいい加減なところも多いのですが、その勇み足が面白く、愛読書の一つです。 無理してでも新羅・高句麗・百済に地名や人名を結びつけ…

気になる数学者のつながり

石原謙と石原純は兄弟だというのは、よく知られている。前者はキリスト教研究者であり、後者は理論物理学者である。 石原純は戦前日本のアインシュタイン・ブームの立役者の一人である。東北帝国大学の物理学教授だった。石原の招きもありアインシュタインは…

虚しさを超克する芭蕉ワールド

夜着は重し呉天に雪を見るあらん 芭蕉の句であります。ボロボロで隙間だらけの廃屋同然の庵居にせんべい布団を重ね着して、 江戸は深川の寒い冬をしのいでいる俳人の風景です。この句は酷寒の一人居の寂しさをふみこえて中国の冬の旅人に自分を重ねているよ…

パーカッション・コンチェルト

フランス六人組のミヨーのおそるべき『パーカッション・コンチェルト』とピアノ連弾『スカラムーシュ』 聴く勇気と時間があれば試聴されたい。 いやはやなんとも、なんともなのだから。

東農大厚木キャンパス

この夏、東京農業大学の厚木キャンパスを散策してみた。場所は厚木市中心部から数キロの小高い丘の上。山といってもいい。厚木駅と繁華街を見降ろせる。隣りにソニー学園湘北短期大学がある。*1 丘のてっぺんに建物は群がっている。周囲を農地、植物園、ハウ…

永井荷風と「石の婆様」

荷風の『日和下駄』は東京散歩を好むヒトの座右の書であろう。第二章は「淫祠」であります。 江戸のすみずみには、路傍の小さな神が溢れかえっていた。荷風の時代には多く残存していた。 「淫祠は大抵その縁起とまたはその効験のあまりに荒唐無稽な事から、…

未練がましさの個人差

未練がましさの男女差を以前ブログでものしたけれど、同じ男性でもこれまた、未練がましさが 天地の差ほど違うことを2つのコンテンツで提示しよう。 まずは、リチャード・モーガンの『オルタード・カーボン』 フィリップ・K・ディック賞を受賞したSFサス…

木城ゆきと『銃夢』と救済の女戦士

このマンガは存外ディープな内容である。キャラがメルヘンチックなのに戦闘シーンはグロテスクだったりする。お屋敷町=天界のザレムはエルサレムからきたのか。クズ鉄町は下町だ。 主人公のガリィは女性(少女?)にして戦闘機械である。戦闘用に肉体改変さ…

ラーオ博士のサーカス

C.G.フィニーの怪作『ラーオ博士のサーカス』は奇妙にもプリーストリーの『夜の来訪者』につながる眩惑感で、読者をグイグイ引きずり込む。 読者には真実がわかりすぎるほどわかっているのに、物語の登場人物たちには、もどかしいほど真実が見えていない、そ…