未練がましさの男女差を以前ブログでものしたけれど、同じ男性でもこれまた、未練がましさが
天地の差ほど違うことを2つのコンテンツで提示しよう。
まずは、リチャード・モーガンの『オルタード・カーボン』
フィリップ・K・ディック賞を受賞したSFサスペンスだ。あの「ブレード・ランナー」の世界をアップグレードしてハードボイルド化した上、サスペンス風味を盛り込んだ意欲作だ。
主人公のタケシ・コヴァッチはコンヴォイと呼ばれる心理操縦術にたけている。この時代はスレーブと呼ばれる「肉体」を服を取り替えるよう脱ぎ着するナノテクノロジーとブレインテクノロジーの世界だ。読み応えたっぷりの小説であった。
ここでの未練がましさの情感は、まったくない。ほぼ唯一の例外を除いては、男女は行きずりの関係だけで終始する。肉体を入れ替える世界にはそれはそうなるかもしれないし、ハードボイルド的なシナリオでは自然な関係ではある。闇の組織として娼館が幾つもでてくるが、そこでの犠牲者は「トイレットペーパー」に喩えられる。
異性はどんなに魅力的でも一過性のものに過ぎない、そうしたクールな野郎どもの世界だ。
これに対して、藤子・F・不二雄の『未来の思い出』は未練の極致となる。
主人公の漫画家「納戸理人」は見初めた女性と再会するためだけに、何度もタイムスリップして人生をリプレイする。この物語りには作者の経験、あるいは未練も込められているのに違いない。
藤子・F・不二雄氏も老境に入り、来し方を懐古しているに相違あるまい。主人公に自分が重ね合わさっているのは、当然といえば当然であろう。
リチャード・モーガンのタケシとは対極の性格である。
両者ともSFであるけれども、まったく異なる世界を描いているのが面白い。
両者とも未練の対極像であるところが、とくに。
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