このマンガは存外ディープな内容である。キャラがメルヘンチックなのに戦闘シーンはグロテスクだったりする。お屋敷町=天界のザレムはエルサレムからきたのか。クズ鉄町は下町だ。
主人公のガリィは女性(少女?)にして戦闘機械である。戦闘用に肉体改変されたサイボーグだ。
なぜ、彼女が屑山に投棄されていたのか? ザレムとはなんなのか。ザレム出身のイドはどうして外界にいるのか、謎は深まる。
確かに、キャメロン監督の「ダーク・エンジェル」の世界を彷彿とさせる。キャメロンが「銃夢」の映画化を構想しているのはニュースにもなった。
木城ゆきとは1990年にこの作品を「ビジネスジャンプ」で連載し始めている。
しかし、調べてみるとこのような「濁世に降り立つ女性戦士」のようなコンテンツは1990年代から2000年にかけて、いくつか映画化されている。
1)『イーオン・フラックス』は1995年に製作されたアニメが原作となり映画化された。濁世はディストピアに置き換えられている。
2)ご存知『バイオハザード』の原作となるゲームは、カプコムから1996年に発売された。
3)2003年の『アンダーワールド』は吸血鬼ものではあるが、コンセプトとしては銃夢的である。ここでも、救済の戦士は若い女性であり、なぜか戦闘能力は抜群である。
ここで社会学的な疑問である。女戦士がヒロイン化したのはいったいなぜなのだろうか?
いつ頃かは、多分、『エイリアン』のシガニー・ウィーバーであろうから、1979年頃と
想定される。
戦士としての自覚をもったヒロインで始まりは誰か、についてはなんとなく、『美少女戦士セーラームーン』を思い浮かべるが、これは1990年頃に「なかよし」に連載開始なのでそうれほど古いわけではない。
掛け値なしに後世への影響は甚大であったろうけど、これが始源であると今のところ、断言はできない。
仮説としては、戦闘美少女は日本において創始された仮想ヒロインであり、ゲームとハリウッドを通じて世界中に伝播したとしておこう。
それにしても何故、女戦士なのであろうか?
歴史的には「女戦士」はアマゾネスなど伝説に属する。実戦ではそれほど多くの女性戦士の事績は残っていない。
- 作者: 木城ゆきと
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1991/09
- メディア: コミック
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ジェームズ・キャメロン監督がこのコミックに惚れたかは読めば了解できる。
【参考書目】
いささか自己顕示欲が強い本ではあるがアメリカにMANGAを売り込んだ功労者の記録だ
木城ゆきとが、積極的に翻訳紹介されているのが、巻末資料からわかる。
萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか
- 作者: 堀淵清治
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2006/08/14
- メディア: 単行本
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