C.G.フィニーの怪作『ラーオ博士のサーカス』は奇妙にもプリーストリーの『夜の来訪者』につながる眩惑感で、読者をグイグイ引きずり込む。
読者には真実がわかりすぎるほどわかっているのに、物語の登場人物たちには、もどかしいほど真実が見えていない、そのもどかしさ。
両書ともハラハラどきどきさせられる。
とくに『ラーオ博士のサーカス』はそれだけで十分楽しませてくれる。
読者は登場人物たちの鈍感さに呆れてイライラし、また一種の優越感を感じる。なんとも不思議な持ち味の小説である。
ハリウッドで映画化されている。そのワンシーン。原書とはちがった味付けにされているようだ。
- 作者: チャールズ・G.フィニー,中西秀男
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1989/09
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (4件) を見る