ラーオ博士のサーカス

 C.G.フィニーの怪作『ラーオ博士のサーカス』は奇妙にもプリーストリーの『夜の来訪者』につながる眩惑感で、読者をグイグイ引きずり込む。
 読者には真実がわかりすぎるほどわかっているのに、物語の登場人物たちには、もどかしいほど真実が見えていない、そのもどかしさ。
 両書ともハラハラどきどきさせられる。

 とくに『ラーオ博士のサーカス』はそれだけで十分楽しませてくれる。
 読者は登場人物たちの鈍感さに呆れてイライラし、また一種の優越感を感じる。なんとも不思議な持ち味の小説である。


 ハリウッドで映画化されている。そのワンシーン。原書とはちがった味付けにされているようだ。

ラーオ博士のサーカス (ちくま文庫)

ラーオ博士のサーカス (ちくま文庫)