2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

近代日本の文学者たちの見世物小屋体験

明治から昭和初期にかけて、『見世物小屋』という大衆娯楽は前近代、いや江戸時代の余韻を残しながら日本の裏面を保存しつづけていたようだ。 こんな見世物のお題が含まれている。ろくろ首と海女が人気だったようだ。 へらへら坊主 海女 美女のろくろ首 砂文…

明治の物売り 山オコゼ売り について

寺田寅彦の随筆に『物売りの声』というのがあり、かつての明治初期の市井の風物詩を描いて自分の好みの一篇である。 謎の「山オコゼ売り」というのがある。 北の山奥から時々姿を現わして奇妙な物を売りありく老人がいた。少しびっこで恐ろしく背の高いやせ…

江戸の珍妙な物売り

江戸時代は世界史的にもユニークな文化を生み出した。物売りも独自なサービス業であると思う。 キリギリス売り。鳴き声を愛でるため、秋の虫を長屋の片隅に置いたりする。 狐の飴売り アメを買った子供のためにキツネ踊りを披露するとか。子供相手の商売もあ…

多摩川の新しくも古い重層的聖地

『シン・ゴジラ』なる昨年の話題作となった映画をこのほどようやく鑑賞した。 首都圏在住者の一員としてはその被害状況がこれまでのゴジラものと比較して、リアルに設定されていることに注意しないわけにはいかないだろう。 一般市民の居住地が高層化したこ…

黄檗宗大本山萬福寺

日本禅宗の三番目に位置するのが黄檗宗である。明代後期の中国禅が江戸時代初期に伝来したのだ。もとは臨済正宗と称していた。黄檗は臨済の師匠だから黄檗宗というネーミングが悪くはない。 いんげん豆でも有名な隠元隆蒅は1654年62歳で来日した。二十人ほど…

古代寺院は日本の自然と敵対していた?

国分寺とは天平13年に聖武天皇が仏教による国家鎮護のために全国に建設を命じた一群の寺院である。国分僧寺と国分尼寺にわかれる。 全国隅々までその命は徹底された。新潟県や茨城県を北限として、南は大隅半島まで主要な島嶼にも建立された。個々の寺院の規…

近年の都知事の韓国大統領化現象

パク・ウネ前大統領が大統領の座から引きずり降ろされるタイミングで、石原元都知事は百条委員会で豊洲移転の責任追及を受けている。ご両人ともに明確な罪状が確定しているわけではなく、現状がうまくいっていないことへの怨嗟で詰め腹を切らされるようなシ…

ジャック・白井のいたこと

スペイン市民戦争は1930年台に起きたスペインの内戦である。リベラル対軍国主義の図式をもち、軍国主義つまりはフランコ将軍側にはナチドイツが援助を行い、リベラル側にはソ連と世界各地からの義民が参加した。 幾多の戦争文学の名作も生み出した。ヘミング…

フランスの植民地の残影

巨大なるアメリカや大英帝国の影でよく理解されていないのが、フランスの植民地であろう。20世紀前半、正確には第二次世界大戦前夜のフランス植民地の有り様は壮観であった。ほぼ旧ソビエト連邦ほどの面積を支配していた、金持ち先進国クラブの一員だったわ…

昔ばなしに見る日本人と動物の関係

日本人の動物観にはいろいろな切り口があろう。日本の昔ばなしを取り上げ、代表的な動物との関係性の深さを比較してみたい。 ここで、定量的な評価を試行する。 まず、思いつくままに生活で親しんできた動物(昆虫や貝類を含む)を対象にすることにする。 馬…

熱田神宮の巨樹を愛でる

熱田神宮の社叢にある巨樹二柱についてのショート随想。 神代から慈しみ守られた樹木の聖(ひじり)なるもの 地から生えいでたに非ず、天から下界に降臨したもうなり そうだ、柳田翁の『神樹篇』を読み直そう。日本の巨樹 ~1000年を生きる神秘作者: 高橋弘出…

入歯の日本近代文学

文学的な観点で近代日本での「入歯」の登場頻度と傾向を探ってみた。大体において歯についての話題は近代日本の文学者たちは触れたがらなかったようだ。 夏目漱石は自分の入歯については語った形跡がない。『吾輩は猫である』では「吸い物の椎茸をかみ切った…

栃木県 さくら市に眠る「つた地蔵尊」

栃木県の北部にちかくさくら市という鄙びた自治体がある。東北線の氏家駅から徒歩数分に地元民の尊崇の念篤い、お地蔵様がある。なんというても地蔵堂があるくらいだ。そうはいってもお隣の浄土真宗のお寺さんからは塀で隔てられていたりする。 いや〜、お地…

急峻な古墳を登る

名古屋市内の古墳を登頂した。 かなり巨大な前方後円墳であります。愛知県最大なんだそうですね。上り路は公開されているようないないような微妙な誘導ロープが張ってあります。ただ、登ってみたものの尾根道には何もない。ただの丘であります。 玄道も石室…

『放浪記』の描く流民社会

林芙美子の『放浪記』は演劇界では名の知れた作品だ。主演の森光子(故人となられた)の2000回達成は話題になった。それもそれとして興味深い現象だが、もとの小説が描いた非定住民は、下層民のライフヒストリーを知るうえでさらに、きわめて興味深い。 書き…

国引き神話で思うこと 「王」の起源

出雲神話中の巨人伝説とも言うべき国引き神話。八束水臣津野命があげた「意宇(おう)」という雄叫びで「意宇の杜(おうのもり)」となった土地があるとは『出雲風土記』の一節です。そうした神話を江戸時代に読み解いたのが新井白石であります。 彼は漢文を…