日本人の動物観にはいろいろな切り口があろう。日本の昔ばなしを取り上げ、代表的な動物との関係性の深さを比較してみたい。
ここで、定量的な評価を試行する。
まず、思いつくままに生活で親しんできた動物(昆虫や貝類を含む)を対象にすることにする。
馬 蟻 犬 猪 兎 牛 狼 蛙 河童 烏 狐 熊 鹿 雀 象 田螺 狸 蝶 燕 虎 蜻蛉 猫 鼠 羊 豚 蛇 山羊
何らかの集合体をベースに被参照数をカウントすることで、日本人のイマジネーションにおける想起しやすさを評価する。
なるたけ、網羅的に昔ばなしを列挙し、動物にかぎらず多くの昔ばなしを集成した編集された百科的な書籍を持ち出すことにする。弘文堂の『日本昔話事典(平成6年版)』をその対象書籍としたい。全ページ数は1130ページとマアマアの規模であり、動物名称をそのなかでカウントするのである。
全ページを対象に上記の文字を検索し単純にカウントするだけである。万が一、犬に「犬山」さんが混じっていても加算しているので、かなり雑駁な計量結果であることは注意しておきます。
降順に並べ替えた棒グラフで示す。
数量結果を示す。
ここから先は主観的な解釈だ。
稲荷信仰の対象である「狐」を差し置いて「馬」が最上位になった。東日本では「馬」がよく使われた。上位になった理由としては、オシラ様や馬頭観音が思い合わされる。
「蛇」が三位というもの興味ある結果に思える。かつては畏怖崇拝の対象であり神話の世界では一番の存在感がある。それが昔ばなしでも継承されているのだ。
「猫」は「犬」をはるかに引き離して四位である。やはり化ける動物は強い。「牛」は「馬」に負けた。牛は牛頭法皇、すなわち素戔嗚尊と習合されたが馬には敵わなかったようだ。
日本にはいない「虎」が庶民の想像に登場するのも面白い。鳥類は「雀」が図抜けている。「蜻蛉」も大蜻蛉洲が日本の古称であることから神話的と言える。
異色なのは「田螺」。この生き物は田主(田の神)の使者と考えられた痕跡と一部の学者は考えている。
原版は1977年に出版された。昭和の後期、ディスカバー・ジャパンの時代である。
- 作者: 稲田浩二,川端豊彦,三原幸久,大島建彦,福田晃
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 1994/06
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今回は参照していないけれど重要な専門書
- 作者: 中村禎里
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