ジャック・白井のいたこと

 スペイン市民戦争は1930年台に起きたスペインの内戦である。リベラル対軍国主義の図式をもち、軍国主義つまりはフランコ将軍側にはナチドイツが援助を行い、リベラル側にはソ連と世界各地からの義民が参加した。
 幾多の戦争文学の名作も生み出した。ヘミングウェイ出世作誰がために鐘は鳴る』やマルローの『希望』、オーウェルの『カタロニア賛歌』なんかだ。
とくに自分はオーウェルのものがお気に入りだというのは、まったくの余談だ。
 ジャック・白井という日系アメリカ人が参加したのは、日本人として誇っていい。非人間グループのフランコ将軍側に対抗する側のほうがマトモな人びとであった。何しろ、天才詩人ロルカを無道にも銃殺し、老いたウナムーノをそのはかない抗議のために終身禁錮にするようなアタマの硬い野卑な集団がフランコ将軍チームなのだ。

 ヒュー・トマスの『スペイン市民戦争』にもジャック白井の名はちらりと出ている。
しかしながら、その軌跡を調べた川成洋の調査でも彼の実像はあまり浮かんでこない。
ニューヨークに在住していたジャック白井がどんな人物だったか、生きた証言はほとんど残されていないのは残念である。