身辺文化の起源

 例えば、フィギュアのもとは奈良平安期のヒトガタにある。土偶はその偉大な先祖であるとしてもいいだろう。サブカル全体に関して、西洋的な大量消費社会の衣の下に中世から江戸の大衆文化が鎮座しているのではないだろうか。
 洒落本はラノベ、コミックは浮世絵、ゴスロリやコスプレは傾奇者や数寄もの。文化は爛熟すると先祖返りしてくるのだ。

 西洋人にはない、女の自由さ(移動の自由、性の開放性など)は中世の文化に始まる。
十六夜日記」のような旅日記を書く女性が800年前にいたのがひとつの証拠だろう。また、ルイス・フロイス安土桃山時代の日本文化と西洋文化の比較論にもそう書いている。

 戦国時代の気風が生きているのは店先の「旗指し物」である。給油所やドラッグストアなどロードサイド店舗で威勢よくはためく飾り物は、陣構えの名残をとどめている。そんな連想が許されるだろう。「夜討ち朝駆け」する営業マンは先陣を切る心がけを無意識裏に鎌倉武士にもとめているのだろう。

 漂泊民の風俗は「ヤンキー君」や暴走族の方々が担っていると言ってはいけないであろうか?
犬神人、放免、婆娑羅、地下人、高野聖...とんでもなく制度外の非常民が大都会によみがえる。
 非正規雇用者は漂泊民である。彼らがこれからの文化の主流になる。ファッションも遊びも流行も中世的なスタイルに接近してゆくだろう。今が花とその所得をつぎ込むのだ。身体や携帯電話やバッグをファンシーグッズで彩るのも今が花の粋のライフスタイルであろう。