ゴジラはなぜ南の海からやってくるか

 ゴジラはマレビトだから。トシドンやアカマタ・クロマタと同類だから。厄を落とし福をもたらす守護神だからだ。南島の来訪神なのだ。
 戯言だと思って読んでいただこう。折口信夫の沖縄体験はその民俗思想の展開に深い刻印を残した。その一つがマレビトだ。
 南の島では異神が来訪する。南の島でなくとも来訪する。
 宮古島市平良島尻の伝統行事「パーントゥプナハ」のニュースを見給え。秋田のナマハゲもそうだ。歳神として行事として来訪するマレビトなのだ。九州は甑島トシドンという謎の来訪神もあげておく。

甑島

種子島

 ゴジラが南方起源となった一因は作者にある。ゴジラの台本の原作者は香山滋である。南洋冒険小説で有名であった。『オラン・ペンデク』シリーズで名をあげる。彼が相談をうけてモノした台本がゴジラの土台である。
もちろん、原水爆実験の脅威をシンボル化したものがゴジラというのは正しい。異論はない。
 しかし、その後定番化されてゆくところが、原水爆反対というイデオロギーと離れていくことをここで検討したいのだ。つまり、害獣ではなく歓迎される、国土を守護する益獣に変じていくのだ。
 なぜ、毎年のようにゴジラは銀幕に登場しなければならないのか?
 それは来訪神の末裔だからである。
 これは長山靖生の「ゴジラは、なぜ「南」から来るのか?」と立場が異なる説であるが、ゴジラシリーズを年中行事の一種として考えていただければいい。
 トシドンやパーントゥプナハ同様にゴジラがきぐるみ的であることも指摘しておこう。

それにしても思う。日本列島は南方から幾たりとなく巨大なパワーに侵襲されてきたかを。台風と黒船、マッカーサーに象徴される連合軍だ。