こんにゃく談義

 味の達人、北大路魯山人は「 蒟蒻 ( こんにゃく ) をつくりあげた作家は、中国人にしても、日本人にしても、驚くべき創作家的料理人である」としている。直木三十五直木賞の直木だ)は死ぬ前に、「食べ物では、今でも、食べたいと思うのは、 蒟蒻 」と記した。岡本かの子は「 何も食べるものの無くなった今、蒟蒻は貴重な糧食であるばかりでなく、私はどうせ餓死するなら蒟蒻ばかり食べて死のうと、こんないこじな気持ちを募らせた」
 この他にも村井弦斎幸田露伴など多くの作家に愛されていたわけだ。
 こんにゃくは東南アジア原産のサトイモ科の多年草だ。原生種はインドネシアで生まれたらしい。してみると群馬県など寒冷な北関東によく根付いたものだ。
 英語名は「devil's tongue」で悪しきネーミングだが、こんにゃくの花はたしかにグロテスクだ。学名は「Amorphophallus konjac」で日本名が反映されている。
 日本での製造法は独自なものがある。こんにゃく芋を輪切りにて天日干しする。これを粉末状にして荒粉にしてから夾雑物を除去してから「こんにゃく粉」に仕上げる。こんにゃく粉に水を加えて練り、石灰を加えて凝固させる。この主成分は多糖類のグルコマンナンである。難消化性の食物繊維であることからアメリカやイタリアでも食材として注目されている。「ZEN PASTA」(しらたき)はイタリアで人気なのだそうだ。日本人女性を妻としたイタリア人が「こりゃいける!」と閃いて生まれた商品だ。

 加水して使えるのだから輸出入に適していることはいうまでもない。

 最後に、永井荷風が『日和下駄』で立ち寄った「こんにゃくエンマ」はどこにあるのだろうと調べてみた。まだ、ありました。文京区の源覚寺だ。塩地蔵も一緒にある味な場所だ。