安曇磯良とデイビー・ジョーンズ

 海のそこの異形の神「安曇磯良」(あずみいそら)は海人族の神として知られる。

「細螺石花貝藻にすむ虫、手足五体に取り付きて、さらに人の形にては無かりけり」と「太平記」には記される。安曇族の祖形神、あるいは戎=蛭子信仰の発生地点におわす霊なのだろう。
 

 これに相応するのが「Davy Jones」という西洋の船乗りに恐れられた海底に沈んだ亡者の精霊だろう。船乗りの悪霊とされているDavy Jonesは『カリブの海賊』の敵役キャラともなった。日本でも戎は土佐エ門(水死人)と同一視される。

海人の祖霊「安曇磯良」は『八幡愚童訓』でも登場する。八幡神と関係するのは応神天皇の皇后である神宮皇后に臣従していたからだ。
 『八幡愚童訓』では「安曇磯良と申す志賀海大明神」とする。北九州の地域信仰になっている。
 海人は茨城県鹿島にも進出してきている。鹿島神社の言い伝えでは鹿島の神は安曇磯良だともいう。

もうひとつ書きおきたい。
福岡県の志賀島では安曇磯良の祭りも伝わる。さらには志賀島には磯良崎がある。この志賀島は江戸時代に[漢委奴国王印]が発見されている。
奴国(なこく)にせよ伊都国にせよ、この地域を支配した国は海人の集落であったはずだ。つまりは、安曇磯良と金印は無関係ではないのだろう。


日本の古代 (第8巻) 海人(かいじん)の伝統

日本の古代 (第8巻) 海人(かいじん)の伝統