2016-01-01から1年間の記事一覧

猿田彦の本貫の社 椿大神

三重県の鈴鹿山地に麓、人里離れた場所に猿田彦大神を祭る神社 椿大神社(つばきおおかみやしろ)がある。 交通不便な土地にある。一時間に一本にも満たない四日市市からの駅前バスで終点にある。だからこそ外来の民に騒がれれることもなく密やかに神秘な気…

平田篤胤の生まれ変わりフィールドワーク 『勝五郎再生記聞』

江戸時代も半ばすぎの1822年、今の東京都日野市の中野村で起きた「生まれ変わり」事件が国学者の平田篤胤の関心をいたく刺激した。 その結果残されたのが『勝五郎再生記聞』というフィールドワークである。フィールドワークとしたのは平田翁が事実を克明に記…

後戸の摩多羅神

中世神話の闇の奥に秘められた、謎の神 摩多羅神(またらしん)を語ろう。畏怖される忿怒神、たたり神、夜叉神である摩多羅神についてのささやかな覚書である。この神は中世には能などの芸能の守護神として立ち現れる。 また、「死者の肝を食う神」とも伝わ…

謎の秦王国

隋書倭国伝はそれなりに史実性が高い正史である。聖徳太子が小野妹子を派遣して「日出ずる処の天子」に始まる国書を差し出した記録は、この書に残っている。 西暦607年とされている。翌年、隋は裴世清を大和朝廷に遣わした。 さて、その経路の記録が謎めいて…

日本精神古層の三人の欧州女性研究者

20世紀に我が国は三人の傑出した古層精神の研究者を持った。いずれも女性である。カルメン・ブラッカー女史(英国)、マリ・アンヌ・ブッシイ女史(仏国)、ネリー・ナウマン女史(独国)である。 このお三方は、日本の古代や近代における巫女と山の神(女…

島国に生きる百済のやさしさ文化

飛鳥時代までの渡来人のなかでもその数や質で抜きん出ているのは百済人であろう。ともかくも三国時代の同盟国であり、白村江の戦いで亡国の悲運をたどった百済の民人を多く受け入れたのだ。 仏教文化をいち早く大和朝廷に伝えたのも百済の聖明王だという。そ…

珍名のお寺

「無能寺」はふたつほど実在する。 福島県版 愛知県版

『論語』はインディアンの酋長のことば

偉大なマックス・ウェーバーが『論語』を評して「インディアンの酋長のことばのようだ」といったとか。 我が国の儒者である、中江藤樹や伊藤仁斎、佐藤一斎などがその意味を聞き知ったら、「南蛮の夷」の嘲弄にさぞかし憤慨するであろう。 なおかつ、ことさ…

山海経の「扶桑(ふそう)」について

『山海経』について陶淵明はその詩でこう賛嘆してます。 流觀す山海の圖 俯仰して宇宙を終せば 樂しからずして復た何如 『山海経』は陶淵明の愛読書でもあったそうです。『山海経』は中国最古の地理書です。 自分もまた、この神話的地理書を読んで「扶桑」の…

ゴロツキ隠居のグローバル宣言

隠居なるライフスタイルは中国伝来のものだが、この山島(日本)にやってくるやいなや、ワビサビと萌えを加えて「粋」なものにする。 そのために原点をふりかえる。 中国の隠者像がはじめにある。 これは老荘よりはむしろ『論語』のほうに鮮やかに現れくる。…

アウトサイダー・アート系の歴史と書誌

アウトサイダー・アートの「美」は芸術の本流から外れた非正統的な造形美である。芸術的手法や統制、方法やクンストとしての教育に束縛されていないがゆえに、奔放で根源的で無意識の世界に近いアナーキーさが魅力でもあり、そこに反発を感じることもある。 …

治水伝説の回帰する中国社会

洪水神話がはっきりと伝承されてきている中国は広大な河川の統治が歴史時代あるいはそれ以前からも国政のかなめとなる重要なファクターであった。 神話から見ておく。史記の「五帝本紀」から 「舜はまた初めて天下を十二州に分かち、河川の流れを治めて水害…

電子化学術ライブラリーの構成

pdfのうち文庫系の学術ライブラリーをカウントしてみたのであります。 学術ライブラリーの文庫といえば、岩波文庫と講談社学術文庫(以下、学術文庫)、ちくま学芸文庫(以下、学芸文庫)、それにクセジュとブルーバックスを加えることになろうか。 ほぼ5…

ちょっと不思議な関係

「【タイ】日本の隠れた心霊スポットが話題に―小桜姫・三浦半島」 という記事が2月12日に話題になった。 三浦半島の小桜姫の祠がタイ(訪日するタイからの観光客のあいだ)でパワースポットになりつつあるという。たしか、日本を紹介するタイの人気TVシリー…

Google Ngram Viewerのある応用例  英語圏からの国際関係の重要性

上記のグラフは何を語るか。Google Ngram Viewerの出力である。 Google Ngram Viewerは数百万冊におよぶGoogle Booksからコンマ区切り単語の頻出率をはじき出す。期間はきわめて長く1500年から2008年までとされる。 複数の国の名前を入力して出てきた結果は…

歴史人口学と宗教

歴史人口学の根拠は戸籍となるのだが、それが近代的なものとなって使えるようになるのは近代国家の成立を待たねばならない。 それ以前の近世のミクロな人口動態は日本では宗門改帳、フランスでは教区簿帳に求めることになる。ということで、いずれも宗教的な…

尋常小学校唱歌より『海』

松原遠く 見るところ 白帆の影は浮ぶ。 干網浜に高くして、 鴎は低く波に飛ぶ。 見よ昼の海。 見よ昼の海。 かなり質の高い唱歌だ。大正時代の豊かな精神性がたゆたう。時代は異なるのだが小学校の教師はこの時期に義務教育を受けたのだろう。なにかにつけて…

三河国一之宮参り

ある晴れた日の午後に、思い立って三河国一之宮、砥鹿神社に詣でた。 三河国一之宮の所在は愛知県の東部、豊橋から内陸に入ったところだ。JR飯田線で30分か。三大稲荷で有名な豊川から一駅目だ。しかしながら、そこから単線となり一時間に1,2本に減少する…

禁じられたクロの民俗領域

折口信夫がその論文でふと漏らしたかのような『クロ』に関わる謎。 具体例はそこで触れられてはいない。だが、黒川能、黒沢田楽やアカマタ・クロマタ、黒米など一連の黒に関わる事象グループを念頭においていたのではないかと思う。 もちろん、物忌みの色と…

『フランダースの犬』と説経節の相似性

時代と場所こそ違うが、ウィーダの『フランダースの犬』とわが国中世の説経節、つまり『山椒大夫』『小栗判官』『愛護若』などの作品群=口承芸能の語り物の間には、似ている所が多い。 いってみれば、パトラッシュとネロは下層民である。いわゆるミゼラブル…

物部氏の全国的な分布についての備忘録

古代人の人名辞典なるものから、気ままに書き抜いてみた。どうやら御野国=美濃、つまり、岐阜のあたりの出身者が1/3くらいだ。筑前や越前がそれに続く。 ああ、もちろん難波や河内、大和地方は別格だろう。饒速日命は河内に降ったらしいし、石上神宮とい…

西日本と東日本の相剋の歴史

有史以来、あるいは以前から西日本と東日本は対峙してきた。そのイベントをまとめておこう。1)壬申の乱 672年 東国の勝利 天智天皇の息子、大友皇子と弟の大海人皇子(即位してから天武天皇)の争い。大友皇子は近江宮にいた。吉野から東国(美濃)に抜け…

大いなる神道家 出口王仁三郎師

さきごろ、出口師の肉声の祓詞を見つけたので共有しよう。霊能者として凡人を圧倒し、ラジオや映画などをつかこなし、エスペラント語と平和運動を我が物として、焼き物の新次元を拓いた、恐るべき人物の声であります。なかなかさばけてる。 こうした巨大な神…

雪合戦と石合戦

新潟は雪合戦発祥元なのだそうだが、本当なのであろうか? 英語版wikiではSnowball fightを載せている。どこが発祥元なのかは無記載だ。二組に分かれて雪球を投げ合うという定義と中世の雪球投げの図版は載せているので、海外にそうした伝統は無いわけではな…