三重県の鈴鹿山地に麓、人里離れた場所に猿田彦大神を祭る神社 椿大神社(つばきおおかみやしろ)がある。
交通不便な土地にある。一時間に一本にも満たない四日市市からの駅前バスで終点にある。だからこそ外来の民に騒がれれることもなく密やかに神秘な気品を湛えた社であり続けているのだろう。
JR四日市の駅からズッーとバスに乗り合わせていた人も神社まで一緒だったのには驚いた。何しろ1時間以上かかるのだ。
記紀に登場する猿田彦命は国つ神である。瓊々杵命(ニニギノミコト)が葦原中つ国を平定するおりに出迎えた威風堂々たる神だ。
「天の八俣におり、その鼻の長さは七つ渥、背の高さ七尺あまり、目は八咫の鏡のようで、照り輝いていることは赤酸漿(あかほおずき)に似ています」と先払い役が畏れている。これが天狗のように後世描かれることになってゆく。
やがて伊勢の佐奈田の五十鈴の川上に落ち着くことになる。というよりも本来は伊勢地方の神であったのと言われている。
境内には社名に違わず巨木が生い茂る。参道にはみ出すところが自然との共生を感じさせる。
門前の行列である。地元の人の尊崇は篤く、参拝の人は絶えない。
三重県の北部である伊勢国の一之宮である。そうとうに由緒ある神社である。
全国各地に猿田彦命を祭る神社はあるのだが、ここでは千葉県の外房にある神社を紹介しておこう。
地元の伝承では猿田彦は伊勢から千葉までやってきて、巨樹=椿の大木に住み着いた鬼を征伐するというものだ。その樹木は鬼の手により根元から引きぬかれてしまったという。千葉特有の巨樹伝承が椿と絡められている。
古来、伊勢と房州(上総や安房)は交流が盛んであったらしい。過去の記憶は海洋民を通じて関東まで伝わり、地元の伝説と習合されていったわけであろう。
千葉県の夷隅町の猿田彦神社。伝説では眼下に椿湖があったという。根元から倒れた巨樹の痕跡だという先の伝承が偲ばれる。
取りあえず、ここでの参考資料
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