2018-01-01から1年間の記事一覧

電子蔵書は行動的歴史好きの打出小槌

歴史好きな人はおおむね、本好きでもあろう。過去の文明、政治、経済、文化と学問、芸術と工芸、遺跡、文学、建築、戦争、宗教や偉人、交通などにまつわる書籍一冊一冊が独自な情報を保有している。よって所有する書物の数は右肩上がりとなる。本の置き場に…

大河小説が流行らない世の中に

『君たちはどう生きるか』の漫画版が売れている。喜ばしいのか嘆息すべきか、微妙なところだ。 ジブリの影響恐るべしというべきか、それともそういうたぐいの法王的権威しか、もはや人々のこゝろを動かすものがないのか。 今どき、簡単に理解できるものしか…

横浜の長津田と後北条氏

横浜市奥地にある長津田はJR横浜線、田園都市線、こどもの国線の三本が通る交通の要衝というべき街であるけれど、かなり地味な存在ではある。 関西人で長津田のことなど知っている人などは数少なかろう。いやいや、神奈川県民でもその地名を知るものは稀だと…

アルジャーノン・ブラックウッドの怪談話(動画)

20世紀を代表するアルジャーノン・ブラックウッドは晩年、テレビ番組でのUncanny Talesで大衆的な人気を博した。イギリス人の怪談話好きを表しているが、戦後の瓦礫のなかでこんな話に聞き入った人々の心情もわからなくはない。 その功績もあって叙勲されて…

銅鐸の弥生時代の呼び名

後世の考古学者が「銅鐸」と呼んだ発掘物を弥生時代の人々がなんと呼んだかが奇跡的に伝わっている。 「さなき」と鐸を称したことが斎部広成の『古語拾遺』に記されている。これはさらに縮小して「鈴」にまで小さくなった。神社の鈴の元は「銅鐸」なのだ。石…

児玉神社の由来

児玉源太郎は旧帝国陸軍の大将、参謀として日露戦争で抜群の働きをした軍人である。その英姿の一部は司馬遼太郎の『坂の上の雲』でも描かれている。 彼の偉業を讃える人々は日本国よりは、台湾国の方に多いとも思える。それは国立台湾博物館に児玉の銅像が展…

禁断の離島 大神島についての文献的まとめ

昭和後期の最大の戯曲家であった寺山修司は辺境やタブー、それに閉鎖的な社会などに興味を持っていたらしく、その短い生涯に「僻地」への一人旅をいくたびか試みている。 その風変わりな紀行文集は『花嫁化鳥』として残されてている。その最初の章が「風葬大…

大石凝真素美(おおいしごりますみ)の水茎文字

きわめてキテレツだが純和風の名前の持ち主は神道思想家の一人であり、明治期を駆け抜けた反近代の神秘主義者であった。一般人には出口王仁三郎の師の一人として記憶されているようだ。 本名を望月大輔という。いかにも甲賀郡出身者的な名である。1832年生ま…

神功皇后のこと

仲哀天皇の皇后で応神天皇の母である神功皇后は、いまだに実在と神話のハザマに置き去りにされている。第十四代天皇である仲哀天皇は神功皇后に取り憑いた神(住吉大神)の託宣を軽視したため薨去。 あとを継いだ神功皇后は応神天皇を孕みながら、新羅征伐を…

奈良の東大寺と新羅の関係

奈良の古寺であり、国宝である東大寺は華厳宗の総本山である。つまりはその大仏は華厳宗の権化ともいうべき盧舎那大仏(るしゃなだいぶつ)なわけだ。 ところで華厳宗の教えはもちろん中国伝来なのだろうが、新羅の影響はただならぬ。そもそも奈良時代におい…

名も無きセーヌの乙女

西洋文化で共感しにくいのが肉体への固執、偏愛である。それは死後のbodyにも連続する。その情念がキリスト教の来世観、つまり、「復活」=肉体の蘇りの信仰と関連がありそうではないかと自分は密かに考えている。カタコンベの頭蓋骨や蝋人形館の歴史なども…

知日的中国人による最近の日本人への批判について

このところ(2017年最終四半期から18年第1四半期にかけて)、中国からの声のそこここで日本に対する憂慮の念のこもった批判がネットで目につく。例えば、ここ。 曰く、日本は下り坂にある。リスクを取らない若者たち、老人だらけの地方都市、外国観光客のい…

女神の土偶と片足の山の神

前のブログを再説する。「チンバ」は放送禁止の禁句だが聖なるスティグマの意味ととっていただこう。 土偶のうちの一部は原始地母神なのだろう。その痕跡が山姥民話に残されているとする吉田敦彦のような神話学者もいるくらい、その影響は近代まで続いていた…

うずみ火や我がかくれ家も雪の中 蕪村

身も心も震える厳しい寒さの冬のよる、 うずみ火や我がかくれ家も雪の中 なる蕪村の句は深々と響きわたる。 似た風合いの句として「桃源の路次の細さよ冬ごもり」を付け合わせると、狭い我が家でもって、暖房を補う厚着にくるまれ寒い手元をこすりながら、そ…

フィギュアの先祖様 土偶 再見

縄文時代の土偶はすでに2万体も発掘されている。そのうち4体が国宝指定になっている。独自性としては狩猟採集文化であるのに地母神的な形象を有していることとされる。縄文時代通期で3000万体作成されたと推定される。当時としては一大文化プロジェク…

君よ、知るや美弥良久(ミミラク)の島を

『蜻蛉日記』にわずかに言及される死者に会える最果ての地美弥良久(ミミラク)は現在の五島列島南端,福江島の三井楽(みいらく)の地に比定される。 いつことかをとにのみきくみゝくらのしまかくれにし人をたつねん と道綱の母(九二七―九九五)の日記にあ…

盗人の神社がある 青木神社

神社というと天地神明に誓って悪には加担しないような場所という思い込みがある。 でも例外のない規則はない。ヌスト神社なるものが横浜にある。 正式な名前は青木明神社である。青木神社で地図にある。京急線の上大岡駅の近くの大岡川のたもとにある。 祭る…

第二次世界大戦の日独軍事裁判の比較から

ドイツではニュルンベルク裁判の後にもホロコーストやナチズムの民族浄化に関わる人道的犯罪の訴追を自立的に継続した。その倫理的規範に基づく行動は見上げたものである。 その独自な訴追の結果はこんな数字に現われている。 1989年時点の集計である。 捜査…

イスラーム圏が戦前の大日本帝国へ寄せたシンパシー

第二次世界大戦、その一連の戦争のなかでもとくに太平洋戦争は帝国主義戦争であると同時に人種戦争でもあった。これは確実な特徴であるといってよい。 当時の日本は本当の敵であったはずのソ連ではなく、アメリカに戦争を仕掛けたのか。ほとんど勝ち目のない…

『君の名は。』と似た設定の洋画

アニメ映画のメガヒット『君の名は。』の類似設定の映画については大林宣彦監督作品『転校生』や日本の古典文学である『とりかえばや物語』などをあげる論説もあった。 それらはLGBTあるいはトランスジェンダーの時代にふさわしい物語りという点に集約されて…