朝鮮神話や伝説における「蛇」はほんとうに目立たない。日本の状況と比較するとそれは顕著だと思う。「三輪山伝説」のようなオダマキ型の神話はないのだ。賀茂神社の「謂はゆる丹塗矢は、乙訓の郡の社に坐せる火雷神なり」の背景にも蛇がいる。また、インドのクンダリーニとチャクラ、中国ですら白蛇伝みたいな説話があるのを考えると不思議だ。
もちろん、「龍」は中国本土から伝わっていて、新羅や高句麗の装飾古墳の壁画に描かれている。
だが、龍は朝鮮半島固有のシンボルではないだろう。朝鮮神話には登場しないからだ。
高句麗、新羅、百済の神話は不可解にも卵生の王族の始祖を語るのだが、蛇とは無関係のようだ。
例えば、古朝鮮の神話は「天帝の息子恒雄は太白山の神檀樹に降臨した。洞窟に虎と熊がいて人間になることを望んだ。熊だけが女になって檀君を生んだ」と伝える。また、半島の伝承では鳥と人との関係は残存している気配がある。「鳥居」との関係が気になる。
韓流ドラマにもなった朱蒙(シュモウ)が出てくるのが、高句麗の朱蒙神話である。
扶余王金蛙が太白山の下で女に会った。女は河伯の娘柳花であった。金蛙が女を部屋に
閉じ込めておくと日光に感じて孕んだ。女は大きな卵を生み、朱蒙が誕生した。高句麗の祖である。
新羅 赫居世(ホコセ)神話になると父親は不明だ。
新羅六村の人びとが川辺で会議をしていると、楊山の麓の林に白馬と大卵が天下り、そこから童が生まれた。彼はホコセ(赫居世=輝く君)と名付けられ新羅の始祖となった
新羅王第四代も同じような伝説がある。
東海のタバナ国の王と積女国の王女が結婚して大卵が生まれた。不吉とされて方舟で流された。新羅の阿珍浦に漂着した。老婆が開けると童がいた。これが脱解であった。
駕洛の金菅露神話。場所的には釜山周辺の地域である。
駕洛国(加羅)の村長らが亀旨峰に集まり神迎えの祭りを行っていると、天空より声あり紫の縄が天から降り、そこに金の食器があり、其の中に六個の卵があり、そこから六人の童が生まれた。それぞれ六駕洛の王となった。
卵生と童、それに天から降る。そういうモチーフがメインだ。だが、この卵はいったいなんなのか。卵生神話は日本にはまったくない。朝鮮神話を編纂した儒教徒は卵からの誕生は認めたが丹塗矢とホトからの誕生は認めなかったのだろうか。
お上品な卵生なのはいいとしても、古朝鮮の神話以外は動物との繋がりが一切断たれているのだ。
古朝鮮の「熊女」はアイヌ民族の祭りを想起させるようなトーテム伝承だが、これはユーラシア大陸の奥地から伝わり来たのだろう。
行過ぎた朱子学専横のせいで鬼神を語らずを徹底させた。純粋な儒教国家という世界の奇跡を現出させた。純度を上げすぎた余り、シャーマニズム的要素や土俗性をすべて伝承から抹消させた。
そいういう特徴がこの民族には濃厚なのだ。北朝鮮のイデオロギーも共産主義をまとった儒教(国父崇拝と血筋絶対性)国家に変質したのだろう。
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