ユダヤ人の知的優位性の初期の社会学的分析

 ウェブレンというと『有閑階級の理論』が名高いが、ユダヤ人について鋭利な分析を行っているのを書き留めておく。
『近代ヨーロッパにおけるユダヤ人の知的優位』なる論文がある。ここでユダヤ人知性の顕現がどのような社会的背景で生じたかを論じているのだ。

 アインシュタインフロイトマルクスと名前を上げればユダヤ人の知的功績の一端がうかがわれる。いくらでも著名なユダヤ知性をリストに加える事が出来る。

 ピーター・バーグの要約文をここに転記しよう。

 自身の種族のイドラが「崩壊する」一方で、異教徒のイドラを受け入れる特別の動機がなかったからである。ユダヤ系知識人たちは、その文化のなかで当然視されている思想から距離をおくことができたため、知的革新者になることができた

 ユダヤ人はヨーロッパ文化圏にあって、居住地の文化と自分たちの文化との境界で商売を行ってきた。19世紀になって、その文化の境界の縛りが緩んだ。彼らは今や両方の文化を行き交うことができるようになった。異文化の交配といういうべきものを自己の精神圏で涵養できる、特権的な場所にユダヤ人は位置を占めていたのだ。

 アインシュタインはどうか?
大学は出たが彼はベルンの役人として生活していた。勃興期のドイツ物理学の中心から疎外されていたが、その息吹をスイスという境界で感取し、異なる発想から物理に革命を起こした。マージナルマンというべきだ。
 フロイトは医者としての道を歩みながら、無意識の世界の開拓者になった。その手法は「父親殺し神話学的」であり、エディプス・コンプレックス、「性衝動」を根源に置くという点では「唯物論的」でもあった。つまり、ユダヤ教の理念の否定が働いているかのようだ。

知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか

知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか