Vaporwave 失われた未来への喪失感

 Vaporwaveは電子音楽とネット上のリミックスの一領域である。2010年代に生まれたてのホヤホヤのジャンルだ。特徴的なのは90年のポップスやサブカルチャーを切りこまざいてノスタルジックなフィーリングをモチーフにしていることだろう。
 また、こうも言える。
 Vaporwaveの多くは、まるで遠くから流れてくるジャンクミュージックに聞き耳を立てているかのような錯覚を覚える奇妙な味わいのサウンドだ。

 日本人の立場から注目されるのは、Jpopsやアニメ、古いCFやサラダのような日本語の切れ端などがふんだんに、しかも退嬰的なフォルムでリミックスされていることだ。

 自分としては、断片化されたJカルチャーがVaporwaveに意味づけと彩りを与えている。それが世界のネット世代に受け入れられることに関心がある。
 世界の同世代の感性が90年代の過ぎ去った未来を懐かしんでいるのだ。彼らの感情を揺り動かす力が日本のバブル崩壊期のコンテンツにあるのだ。
 そう、当時のコンテンツは21世紀の閉塞空間を告げていたかのようである。まるでミネルヴァのフクロウなのだ。
 そう、2010年になってようやくバブル期のコンテンツに世界の感性が追いついたのだ。


 典型的なVaporwaveのタイトル。遺伝子のスプライシングのように無数の楽曲が増殖しているのではないか。