昨年暮れに災難に見舞われた糸魚川市の方々にはいち早い復興まちづくりを祈る一市民であります。
糸魚川は翡翠(ヒスイ)の町であります。ジオパークにも指定されている。
かつての地名は沼川であり、「高志(こし)の国、奴奈川(ぬながわ)の郷」と万葉の頃に知られていた。
「渟名河(ぬなかわ)の 底なる玉 求めて 得まし玉かも 拾ひて 得まし玉かも 惜(あたら)しき君が 老ゆらく惜しも」
実は「沼河比売」はヒスイ=硬玉と深いエニシがある。町の中ほどを流れる姫川下流の縄文遺跡(長者が原遺跡)ではヒスイ製硬玉が発掘されている。この「姫」とは沼名河姫であることは間違いない。
日本最初のジオパークに指定されるというのもこの縄文伝統と無縁ではない。ヒスイと黒曜石を産出するからでもある。これらは日本だけではなく海の向こうにも渡ったと考えられている。それ故に、世界最古のヒスイ生産地に認定されているのだ。
長者ケ原遺跡と並んで有名な寺地遺跡(国の史跡)はヒスイによる玉の工房として名高い。縄文中期以降の生産ネットワークの一つであった。中国大陸に輸出されていた可能性もある。中国ではヒスイは産出されず、貴重品として前漢・後漢や三国時代の王侯貴族が装飾品として愛用していたのである。
「日本の国石ヒスイ 写真提供:糸魚川市」
沼名河姫は縄文系の神として特異なポジションにある。
まず、出雲神話では大国主命が奴奈宜波比売(=ぬなかわひめ)と結婚する。『出雲風土記』の国引き神話では古志の国を引き寄せて出雲の国ができる。古志という名の地名がいまの島根県にあることも言い添えておく。
縄文系の建御名方神は沼名河姫の子どもという伝承もある。諏訪大社の神に比定される神である。
先ほどの寺地遺跡には環状木列が発掘されている。諏訪の御柱と関係があるわけだ。
天孫族の支配に抵抗しつつ、最後には国譲りをした大国主命の系統に属しているわけであります。
縄文中期に属する長者ケ原遺跡から出土した土偶は「カッパ型土偶」として知られるが、女性像である。一見異様なこの土偶こそ、地元の女神である「沼名河姫」の元型かもしれない。もしそうなら、「沼名河姫」は川の神でもある原始地母神なのだ。
【参考資料】
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実際には縄文土器の形象と日本神話を結びつける試みはネリー・ナウマン女史が先鞭をつけた。
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