ロンギヌスの槍と刀鍛冶

 「ロンギヌスの槍」の名はアニメファンなら耳にしたことがあろう。もとはと言えば、イエス・キリスト磔刑にまつわる伝説の槍である。ローマ兵士が瀕死あるいはすでに事切れたイエス・キリストの脇腹を突いた、その槍だ。槍でとどめを刺したのではなく、生き死にを確かめたのだという。
 ローマの百人隊長であるロンギヌスがその兵士の名とされる。でも、ギリシア人っぽい名前だな。
それもそのはずで、ロンギノスというギリシア名がラテン語化した。ピラトゥスの部下がギリシア人だったことになるので、ありえないことではないが、少々おかしい。
いずれにせよ、後に聖ロンギヌスとなる。

 この槍は、いつ頃からかヨーロッパの権力者の「聖遺物」になり、力の象徴になっていった。
ハプスブルク家所有の槍はウィーンのホーフブルク宮殿に収めらていた。若き日の不遇のヒトラーが遭遇したとき「霊感」が未来の独裁者を襲う。
 そして1933年にナチス・ドイツオーストリアを併合した際に、ヒトラーは自らの所有物にしたのだ。ロンギヌスの槍を手にしたものは良かれ悪しかれ世界を支配するのだ。
 ナチスのオカルトもの文献ではこのようなストーリーでヒトラーと「ロンギヌスの槍」の宿命の出会いを語る。

 真偽はともかく、ロンギヌスの槍の複製を作らせることがナチス幹部の間で決まった。その時、なんと日本刀技術を知るカール・エルンスト・ハウスホーファーが日本の刀鍛冶を招聘して、複製させたという。
 残念なことにその刀鍛冶の名は伝わっていない、ということらしい。


【参考文献】

刀鍛冶の出展はこの本なのだが、ローマ兵を ガイウス・カッシウス・ロンギヌス とする。これはカエサルの暗殺者の一人なので、明らかにおかしい。

ヒトラーとロンギヌスの槍 (ボーダーランド文庫)

ヒトラーとロンギヌスの槍 (ボーダーランド文庫)


トレヴァレヴンズクロフトの本に刀鍛冶は出てこない

ロンギヌスの槍―オカルティスト・ヒトラーの謎 (学研M文庫)

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