「白虎隊とヒトラー・ユーゲント」
この両者を並べて論じるのはふさわしくないとするのは大多数の意見だろう。会津戦争とナチスの非道な侵略戦争は異なる次元のものだというのは、それはそうだろう。
薩長の傲慢な姿勢に反発した奥羽列藩同盟は士道の本分を貫いた。それを「悪の帝国」の犠牲者と比較するのは何事かというわけだ。
ナチズムの反合理性や残虐性、人種差別と政治的軍事的な暴虐はいまさらあげつらうことではない。悪そのものであるのは無論だ。
だが、一方で随分と白虎隊や二本松少年隊の様式はヒトラー・ユーゲントに近いものがある。そもそも忠義という点で同じだ。かたや藩主に対して、かたやヒトラーに対する無思考的な、合理的な判断停止は見かけは同じだ。
その結果、両者とも絶望的な防衛戦に投入されて、哀れすぎる末路を辿っていく。
ジョン・トーランド『最後の百日』で描かれたライン攻防戦で十代の少年たちが連合軍相手に無惨な戦死を遂げるのである。
いやいや、ヒトラー・ユーゲントのような狂信性は白虎隊にはなかった。サムライの伝統を地で行っただけであり、それは西洋的な反合理的運動のナチズムと対比されるようなものではないという意見もあろう。
伝統という言葉の表面性だけで言うなれば、ナチズムもゲルマン精神の復活を唱えたりした。太平洋戦争での帝国陸海軍も武士道精神なるものを標榜している。
伝統の有無はこの場合関係はないだろう。
その敢闘精神は、両者とも見事であった。臆して逃げ惑うような半端な行動はなく、祖国防衛に殉じたという、その点はあっぱれと評するしかなかろう。
両者は行動様式の点で同じものなのだろう。ヒトラー・ユーゲントは1938年の来日の際に、飯盛山の白虎隊慰霊碑にわざわざ訪れている。そこで既にドイツ人青年たちの国土防衛への参加が運命づけられている。
なるほど、ナチズムと士道は似通うものはあるのだろう。しかし、ナチズムはすべての秩序を自分、あるいは「純血的アーリア人」の都合よく解釈し、自己本位に振舞った。その傲慢さと無礼さは、日本士道とは相容れないものがある。
近代化以後の反合理かつ非人道的な主義主張ということで、封建主義の武士道とはやはり異なるものだ。
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