犬神人(いぬじにん)の語源

 中世の賤民として神社に従属して犬神人(いぬじにん)という人たちがいた。境内などの清掃や廃棄物処理に従事したとされている。

 自分にはこのコトバの由来が不思議でならなかったが、折口信夫の『万葉集辞典』をみて氷解した。

 この書は万葉集のことばを折口流に解釈したものである。折口は当代一流の万葉読みであったことも申し添えておこう。

 いぬじもの 犬の如くの意。犬は路に臥したり、叉、その死屍を道に晒したりするものだから、道に臥すの枕問として用ゐるのである。

 もとは枕ことばであった「いぬじもの」からの当て字が犬神人だったのだ。彼らは参道に臥すように生活していたのであろう。古代から中世の寺社勢力の増長のなかで土地から遊離した浮遊民を吸い取っていたのだ。意味的かつ歴史的にあてはまりそうである。
 どうであろう?