竹生島にわたる

 とある晴れた日の午後、琵琶湖湖上の聖地、竹生島を訪れた。もとは万葉仮名的に「都久夫須麻」と表記されるが、「神のいつく」島の意味であったとされる。つまりは、広島の厳島と同じ語源なわけである。
 ご祭神は三柱。

市杵島比売命 ( 弁才天
宇賀福神 (うがふくじん)龍神
浅井比売命 (あざいひめのみこと)

 市杵島比売命は宗像三女神の一柱であり、厳島神社と重なるわけだ。弁財天は中世神話での習合の結果であろう。海洋の女神がここに居ますのは微笑ましく古代世界の息吹きを感じる。
  宇賀福神は宇賀神とおなじく蛇神さまじゃ。龍神に接収されているのはやはり中世神話の結果だろう。
 注目すべきは浅井比売命であろう。この女神こそはもとの地元の神であり、戦国大名の浅井氏はこの国津神と繋がりがある。
 山の神どうしの戦いの結果、負けた浅井比売命の首が切り落とされ、竹生島となった。昔の巨人族神話のような伝説がある。


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 国宝である竹生島宝厳寺竹生島神社が鎮座している。秀吉の所縁の建造物が多いのは、長浜に城を構えたことがあるからであろう。ここは桃山建築の宝庫だ。
 この神社は弁財天をまつる。三大弁財天様の一番だという。
 秀頼の時代になってからも、その命を受け臣下の片桐且元が普請を行っている。

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 島内はこじんまりとしており、土産物店も数軒のきを連ねるだけだ。30分もあれば一巡りできてしまう。しかしながら、近隣諸国からの観光客は多く、それなりの人数がひきりなしに訪れている。

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 実はこの島の近くに琵琶湖湖底遺跡があるという。なかなかに謎多き島なのだ。
 琵琶湖は世界三大古代湖の一つであり、カスピ海バイカル湖についで古いそうだ。明治の神道思想家の大石凝真澄翁は人類発祥の地だと唱えたのはゆえなしとは言えないと思わず、五秒間だけ信じてみたい。