アメリカ経済の衰退の論拠

 何度かこのテーマで考えてきたけれども、ひとまず論拠をまとめておきます。

 アメリカ経済は二度と世界の先導者にはなりえない。その大きな論点として、エネルギー効率の問題が第一にある。
 浪費型の産業基盤と生活構造は変化していないし、慣習化している。相変わらず洗面所では紙タオルで手を拭くなどというのは細かすぎるが、産業設備は一昔前のものであり、建築物は老朽化したままであり、交通機関は相変わらずエアラインと車だ。
 産業基盤が刷新されないということは技術革新が大きな制約を受けるということでもある。ネット産業は確かに大きな例外というべきかもしれなが、他の例外は多く存在はしないであろう。

 インフラの非効率が二番目だ。大都市のインフラは、上下水道・道路・橋梁・トンネルなどが、片端から旧世代のままだ。事故を起こさないように保全するのがやっとの状態であり、予算不足のままで大都市運営をしている。ニューヨークのような東海岸の大都市では電力民営化のせいで、高圧電線網の補修がお座なりとなっているともいう。
 それが何を意味しているか?
 固定資産が急激に減価スパイラルしてゆくということだ。大都市は崩壊しないようにするだけで手一杯なのだ。自治体にはスクラップ&ビルドする余裕がない。大都市の中心はひたすら、老朽化してゆく。

 最後にあげられるべきは、20世紀のあいだ、アメリカが主導してきたイノベーションの不在だ。ITにおけるグーグルやアップルの活躍に目を奪われていてはならない。彼らの模倣者が陸続と出現しているのだ。
 ITそして金融工学イノベーションがもたらしたバブルのあとに続くものが見えていない。バイオだろうとグリーンエネルギーだろうと、どうやらイノベーションの大型後継者ではないようなのだ。
 バイオは食糧革命を起こしたろうか?
 例えば、遺伝子組み換え作物は、早くも問題に直面している。雑草が追いついてしまったのだ(日経サイエンス参照)
 また、薬品開発への応用は空手形に終わったというのが、現在の評価である。
グリーン・ニューディールは失敗に終わる公算が高い。前回のニューディール政策ルーズベルトの)と同じ命運をたどるかのようだ。

 その他に行け加えたいファクトは医療と教育の不均衡だ。
 医療や教育の不均衡は平均的な生活が豊かな分、甚だしい不公正と非効率を生み出しているかの印象を与える。つまり一部のトップクラスの存在が平均を押し上げているだけで、国民の大多数は何ら恩恵を得られないのだ。役員報酬と従業者収入の差と同じ構造上の歪みが、ここにもある。
 医療制度はブッシュ政権時代の市場原理の導入でに大きく歪曲さえたものになりはてた。高価な先端医療と薬剤は国民全体に恩恵を与えていないのこは以前、データで確認した。美容外科や高価な延命治療はQOLには無関係なのだ。経済にもプラスではないであろう。大卒者の就職率は2割だ。一部のエリート校を除けば教育の質は平均を押し下げている。

 アップルやグーグルがアメリカのイメージアップに役だっているが、だが、国全体でみれば、一次産業と軍備以外には取るに足らない国になりつつあるような気がしてならない。

 注記:イランのジャーナリズムが敵対的感情から同様な主張をしているが、自分はより中立的な立場と事実から21世紀の先行きを展望しようとしているだけだ。