日本人にとってカーチス・ルメイは断じて許されるべき人物ではなかろう。東京大空襲の作戦立案者で、責任者だ。
彼は回想録で、こう述懐している。
われわれがやっている空爆に道徳面で心を悩ます、そんなことはまったく馬鹿げたことだ
同情の一欠片も、なんの痛みもありゃしない。
こういう非人間が戦争の指揮を取るのは不思議ではない。
この乾物じみた冷血漢は、アメリカ空軍と日本の自衛隊の育ての親でもある。だからといって、ルメイに日本が勲章を贈るのは筋違いであり、断じて間違いである。
碌でもないハナシとはこのことではないだろうか!?
今さらだが、繰り返す。
ルメイが故人であってもこの残虐な行為は糾弾されるべきなのだ。
その当人が、1964年に勲一等旭日大綬章を授与されている。無辜な人民の殺戮者に、東京の下町(江戸情緒が残っていたはず)の破壊者を日本の為政者が推薦して受勲させた。荷風が愛した下町と庶民を殺戮しつくした。長唄の師匠も更紗の職人も、淫祠も何もかも一緒くたに焼き尽くした。
死亡:8万3793人
負傷者:4万918人
被災者:100万8005人
被災家屋:26万8358戸
いくら日本の軍部や役人・政治家がアホで無定見だからといって、これほど庶民が犠牲になった言い訳にはならない。侵略戦争していたからといってそれは銃後の一般市民を無差別攻撃の正当化にはならない。
その責任者に勲章とは..。
そして、そんな厚顔無恥なオカミをかかえた国民は不幸せだねえ。
さて、その後だ。
ルメイは出世した。核爆弾の誕生と広島長崎への投下を歓迎したのはルメイである。その経験を生かして大型爆撃機による核報復戦略で冷戦時代を演出した。ついでながら、核爆弾開発者にユダヤ系科学者が多く関与していた。これが日本における根拠なきユダヤ陰謀説の伏線となってゆく。彼らはナチへの恐怖から核爆弾を開発した。日本への投下は反対者が多かった。
さてルメイは出世した。だがその栄華が長続きしない。
さいものルメイの長距離爆撃思想も大陸間弾道弾や核ミサイルを搭載した潜水艦の登場で時代遅れな存在となってゆく。これは、のちのちの物語であり、勧善懲悪の結末でないのはモチロンのことだ。
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田中利幸のこの本は無差別爆撃が枢軸国よりは連合国の方に意図的悪意をもって発生していることを指摘している。パル判事はそうした経緯を知っているから、広島を訪れた折に「過ちは繰り返しません」との碑文に公憤を示したのだ。誤ったのは一般市民ではなく、為政者であり、大量殺人の罪はこの場合には連合国にあった。
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