あまり対比されることがないが、ソ連は1939年に領土の西側と東側で戦争を行っている。
西側はフィンランドとの「冬戦争」であり、東側は日本人にもおなじみの「ノモンハン事件」である。国内大粛清で閉塞感気味のスターリンの大博打である。
まず、よく知られることのない冬戦争から諸元をまとめる。
原因はソ連による不凍港と領土確保のための侵略戦争である。時期は1939年11月−1940年3月である。一時期、フィンランドが歩み寄る形で講和し、領土の10%をソ連に割譲する条約の締結で落ち着いた。しかしながらナチス・ドイツのソ連侵攻で再度、フィンランドは領土回復をはかった。
独ソ不可侵条約のうらで第一次世界大戦の失地回復をスターリンが目指した。小国を餌食とする純然たる帝国主義的な領土侵略である。
投入兵力はご覧の通り小国寡兵のフィンランドをソ連が大兵力で攻め潰す構図だったが、豈図らんやフィンランドの勇戦により五分五分以上の戦績をあげる。
総兵力
フィンランド ソ連
歩兵 250,000名 1,000,000名
戦車 30輛 6541輛
損害
戦死 26,662名 126,875名
航空機 62機 1,000機
この戦争中に大活躍したのが日本版wikiで大人気のスナイパーシモ・ヘイヘである。
フィンランドの最高指揮官であるカール・グスタフ・エミール・マンネルヘイムも、勇壮苛烈な戦闘指揮とナチス・ドイツを見切る果断な戦略家として第二世界大戦中の指折りの名将である。
同時期にソ連はもう一つの無謀な紛争を大日本帝国を相手に行った。
ノモンハン事件である。こちらは1939年5月から9月と短期間である。原因はソ連/モンゴル人民共和国と満州国/大日本帝国の満蒙国境めぐる紛争である。
こちらには残念ながら日本にはマンネルヘイム並みの知勇兼備で有徳なる司令官はいなかった。陸軍参謀の辻政信が悪名を残すくらいだろうか。
今から見ればどっちもどっち、どちらもワルモノであろう。数年を経ずしてモンゴル人民共和国はコミンテルンに一大粛清という血の洗礼をあびるはめになることを思えば、一番の被害者はモンゴル人民であろう。
それはさておき、戦闘結果である。
総兵力
大日本帝国 58,000名 ソ連 69,101名+モンゴル兵 8,575名
損害
戦死 8,440名 9,703名
戦車 30輛 400輛
航空機 160機 360機
領土保全という点でソ連の勝利である。日本の下士官、兵卒はよくやったというべきであろう。ソ連の代償は大日本帝国と比較して少なくなかったのが近年の資料から判明しているようだ。また、田中克彦が『ノモンハン戦争』で報告しているようにモンゴル将兵は大日本帝国(関東軍)の陸軍士官たちを尊敬の念をもっていたとされる。満州国は、モンゴル人民にとって傀儡国家と軽視されていたわけではないのだ。
スターリンのソ連というのは実に凶悪な独裁国家であり、大日本帝国とどっちが悪いというという当時の日本はそんなに酷くもないのではと最近は思うようになってきたくらいだ。
ことに小国の尊厳を力で踏みにじるやり方というのはレーニンの批判した帝国主義そのものである。
最近の『共産主義・黒書』シリーズで白日の下あからさまとなった赤色テロ、その中にはキリングフィールドや文化大革命も含まれるが、目を覆うばかりのリンチ粛清の歴史がどの共産主義国家にも起きていたわけである。
【参考資料】
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英語版であるがドキュメンタリもある。