消えゆく民俗芸能「つく舞」

 利根川沿いの町にあえかに残る「つく舞」
 古い伝統を有する民俗芸能の重要な遺物である。
奈良時代流入した中国の古代舞楽の生き残りとも言われ、散楽雑戯の流れを汲む蜘蛛舞が利根川下流に伝わる。

江戸時代に見世物小屋の掛け物だったのが、船着場で船頭が帆柱の上で曲芸を演じた。それが龍ケ崎や布川などに残留したのだと民俗学者は信じている。

 赤松宗旦の『利根川図志』によれば、

布川大明神の例祭三日目の六月十六日,神輿本殿に帰るとき境内に尋撞の舞あり,庭上に船形をつくりこれにツク柱とて八間許の帆柱をたて舞人雨蛙の面を被り,この柱に上る

とある。
 残念ながら布川の「つく舞」は消失してしまった。布川は柳田国男がその青年期をすごした土地でもある。彼はここで赤松宗旦の『利根川図志』と出会っている。

 別名の蜘蛛舞とは見世物小屋の雰囲気たっぷりのなんとも言えない味わいがある名称ではないだろうか?
 龍ケ崎野田には無形文化財として祭事となっている。

利根川図志 (1971年) (岩波文庫)

利根川図志 (1971年) (岩波文庫)