今までも、これからも放射能と隣接して日本は生き残りを図らねばならない。
戦後、哲学者の森有正のもとで学ぶフランスの留学生が、ある日吐き捨てるように
「日本には、もう一度原爆が落ちるでしょう」と語ったという象徴的なエピソードがある。
ヒロシマ・ナガサキ、そして、第五福竜丸と東海村の臨界事故を経て、とうとうチェルノブイリ・クラスの事故がフクシマに起きてしまった。
原子力に関連する一連の歴史的な事件が集中的に日本に生じているのは、この国全体に課せられた運命であり、試練だと感じるのだ。
世界の反原水爆運動がヒロシマ・ナガサキに端を発し、そして、脱原発運動がフクシマを機縁として先進国の流れになろうとしているのだから、どれもこれも日本で起きた事件は歴史的と言っても過言ではなかろう。このままだと、もう一つ負の世界遺産が日本に増える、ということもありえる。
今後、日本人は狭い国土で放射能と向き合って生き延びなくてはならないのだ。それも厳しい試練だが、我らにはヒロシマ・ナガサキで得た貴重な教訓と学問の蓄積があるのだ。
近藤宗平の『人は放射線になぜ弱いのか』は三版を重ねているロングセラーだ。その表題とは異なり、この本では低線量放射線に人体は耐性があることを論じている。被爆者の方が平均寿命が長いのをこの本で知ったくらいだ。ポイントは幼少児が被曝を避ければよく、全員で内部被曝を避ければなんとかシノゲルのだ。
注意すべきことを注意すれば発がんリスクを低減できるのだ。
それを裏付けるドキュメンタリーがBSで放送された。
『チェルノブイリ事故 25年 被曝の森はいま』
がそれだ。無人となった被曝の森では多くの動物が健康に繁殖している。
その研究成果は重要だ。放射線をいたずらに恐れるばかりではいけない。食による内部被曝をおさえつつ健康に生存できることがチェルノブイリの森の動物たちの研究からわかってきている。
とりわけ、日本人が対症療法として覚えてソンがないのは、抗酸化作用のある食品が低線量放射線にたいしてがん発生リスクを抑えるのに、有効だとする研究結果だと思う。
ヒロシマ・ナガサキ、そしてフクシマ。これらの悲劇から大いに学び、教訓を生かしてゆくのが、我らの人類的なミッションなのかもしれない。
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人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)
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