バルセロナの古い意味はフェニキア語で「バルカ家の町」だとするのは宮崎正勝の『海からの世界史』だけだ。
このバルカ家というのは、ともするとカルタゴのハンニバルの属する一族、バルカ家を連想してしまう。
事実、ローマとの第一次ポエニ戦争に敗戦してからハミルカル・バルカ(ハンニバルの父)将軍はスペインを制圧し、私領とする。ここで私軍を養い再び、ローマに挑戦したのだから、「バルカ家の町」があってもおかしくない。
もとはと言えば、カルタゴはフェニキア人の植民地だった場所でもある。商業国家であったフェニキアの末裔たちが住む場所でもあった。
時代が降ると、14世紀にはカタルーニャ地方の商人たちが地中海交易で大繁盛する。そして、イザベラ女王がこの地に生まれ、レコンキスタが終わった時点でスペイン王国の女王になる。コロンブスのパトロンにもなるわけだ。
この土地の人間は独立心が旺盛であるのは、今回の騒ぎに限ったことではない。なんども悶着を起こしている。スペイン内戦でも大いなる抵抗の地として、オーウェルなどの義勇軍もこの場所に集結して、フランコ一派と戦った。
そのカタルーニャの抵抗は共産党系やリベラル、アナーキストなどもからんで、内紛で自壊したとも評されている。
そうオーウェルである。彼の『カタロニア讃歌』のおかげで、その地名は世界的になったといえる、ちょうど、ガウディのサグラダ・ファミリア教会のおかげでバルセロナが世界随一の観光都市になったように。
すぐれたノンフィクションの持つ引力のせいで、スペイン市民戦争の記憶は永遠に焼き付けられた。この自壊するカタルーニャ民衆の内紛は社会主義者だったオーウェルの理想を変容させた。それが『動物農場』だったりする。フランコ独裁の凶暴性と同じようにむき出しの権勢欲をスターリンの共産主義者たちも露わにした。気の毒なのはカタルーニャの民衆でもあった。辛酸をいくども嘗めることになるのだ。
ヨーロッパの小独立国家はスイスやベルギー、アイルランドなどがカタルーニャと同じ規模だとされる。
バルカ家を模範にしたように反抗心にあふれ、フェニキア商人の血筋を引いたカタルーニャの人びとはどこに行くのだろう?
【参考文献】
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