鳥刺しなんて一度も会ったことも見たこともない。パパゲーノくらいしか思い浮かばない自分なのであるが、
れっきとした職業としてヨーロッパでは認知されていたようだ。
明治期の親日家で御雇外国人であったモースの『日本その日その日』には、注目すべき鳥刺しの芸が語られている。鳥刺しが小鳥に芸を教え込んで、縁日に見世物をしていたようだ。
それは、小鳥が矢を射る芸、小鳥が鐘楼の鐘をつく芸だ。
ことばで書くと他愛のない見世物に思えるが、モースにとっては日本的巧緻を体現したアートにおもえたようで、しきりに感心している。
まず、小道具が凝っている。小型の弓矢をしつらえる、愛らしい仕草で弓を射る。カゴから出てきて寄木細工の小さな屋根付きの鐘楼にピョンピョン近づき鐘をトンとつく。
モースが市井の職人の技を高く買っていたのは有名(ピーボディ博物館のモースコレクション)だが、カワイさをパフォーマンスする芸を透視して、優れた技が日常的だった江戸時代の名残りを見ていたのは確かであろう。
ボストン美術館モースコレクション→http://www.mfa.org/node/4508
- 作者: E・S・モース,石川欣一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1970/09/01
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