少女たちの完璧インナーワールドを感じる

 バーネットの『小公子』などが典型なのだろうが、女性の生み出すフィクションにおいて、見られる天界から降臨したような主人公と天使の眷属たちのような登場人物たち、純粋な悪はなくて境遇がその人物を敵役にしているだけである。
 そういうキラキラ光るようなパーフェクトワールドというのは十代の少女たちだけが体験できるように思われる。
 そのパーフェクトな世界ではどろどろしたものや汚いもの、ごみ溜などは排除される。生活苦やもつれた人間関係などはない。『赤毛のアン』のマシュウのように親しい人が死ぬこともあるが、必ず昇華され聖人のように扱われる。
 欠点といっても愛すべき短所しかない、そんな人物ばかりの世界が彼女たちの住むパーフェクト・ワールドだ。
 古代ギリシア人たちも十代の少女たちの精神世界について、その比類なき幸福さは他になしと言っていた。

 日本の少女漫画にはそんな設定のコンテンツがいくらでもある。くたびれた世代である中年オヤジたちにもにも味わえる。もっとも、ロリコンという誤解をかなりうけてしまうリスクが大きいのだが。
 取り分けても、CLAMPの『カードキャプターさくら』で、パーフェクトワールドをほんの少しだけ垣間見ることができるのだ。発達心理学では「幼児的全能感」というべきなのであろう。だが、そうした至高体験を持たない人生はちょいと寂しい。

 どうです、このキラキラお花いっぱいワールド!

小公子 (岩波少年文庫)

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若草物語

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赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫)

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