府中街道ぞいの石神宮

 石を神とみなすか、神が石に宿るのか、どちらにせよ不思議な信仰を今の世まで日本人は抱き続けている。

 この社もその一つだ。近代的な都市のさなか、府中街道と新幹線がまじわる一角に鎮座する。その名も『石神宮』
 地元の人たちの尊崇が続いてる。ウラ寂れ感は一切ない。老人たちが拝んでいるのを何度か見かけている。

 八畳ほどの狭い敷地はきれいに赤色のアスファルトで整地されている。旅人のためのお休み処も設置されている。社殿の後ろには新幹線の高架がみえる。新と旧のクロスポイントである。

 お参りをすると録音された雅楽サウンドが響く。ちょっとハイテク。
ツルとカメが配された小さな池もある。金網がある。金魚がいるようである。

その上に、ご丁寧に奥宮までもある。

右手にあるの石碑。こちらがかつての石神さまの御神体の名残りであるのだろうか?

 由緒書きのは「石凝姥神(いしごりどめのかみ)」とあるが、もとは塞の神=境界を守る神であったとも記されている。石にまつわる伝説は数多くある。結婚し、子を生み、泣きむせび、子を育て、さまよい、ものを言う。とまあ、その名も石上堅が『新・石の伝説』でまとめているように、全国津々浦々にある。
 何とも言えない不可解な信仰ではある。


 ここに限らず、中部から関東までひろがる石神文化圏。石にまつわる信仰は幾多の変容を経ながら多様性を増大していったようである。大都会の片隅でそうした変容した神がひっそりと、しかし、地域に寄り添うように存続しているのだ。


 折口信夫の門弟でもあった石上堅の石信仰の集成。

新・石の伝説 (集英社文庫)

新・石の伝説 (集英社文庫)