今しがた、ワシントン・アーヴィングの『ウォルター・スコット邸訪問記』(Abbotsford)を読み終えたところだ。
二人がどのような出自でどのような小説世界を生み出したかは触れないでおく。
サー・ウォルター・スコットの小説は今では文庫で読めないが、それでも18世紀において西洋世界の人気作家だったとだけ言っておけばいい。ガウスまでもが愛読者だったとだけ追加する。
ウォルター・スコットがその豪邸の周囲に広がるスコットランドの自然をアーヴィングに紹介したおりの、アメリカ人作家の反応が面白く、抜き出しておく。
実を言うと、私ははじめ、辺りに目を走らせて驚いた。そして、言葉を失った。その光景を見て、失望に近い感情を禁じ得なかったからだ。すなわち、見渡す限り眺めたところで、目に入るのは十重二十重と連なる、波打つ灰色の丘の単調な風景だけであったのだ。....まったく樹木が見あたらなかった
アーヴィングが生きた頃のアメリカ東海岸は鬱蒼として樹木が豊かだった。彼が育った森林地帯と比較して、スコットランドの一本の木のなさに唖然としたわけである。
ちなみにイギリスの生物単調性、いや生物多様性はこのサイトの数字が物語る。
生物の個体数(カッコ内は固有種)
植物 魚類 鳥類 哺乳類
日本: 5,300 (1,800) 3,850 (419) 542 (10) 107 (48)
英国: 1,623 (160) 315 (0) 542 (1) 42 (0)
イギリスの面積は24万平方キロ、日本は37万平方キロだ。
この差は何を物語るかというと、人為による開発の傷跡だろうか。山ばかりの日本列島の開発しにくさだろうか。なかでも哺乳類の固有種がいないとは悲しいことだ。人類により討滅されたのだろう(紳士の狩猟趣味の対象である狐は外来種なのだろう)
いずれにせよ、森林地帯が少ないことが生物多様性に影響したのだろう。
この有様はアボッツフォードに足を運ぶまでもなくGoogle mapで確認できる。この場所、美しい景観なのかもしれないが、豊かな自然があるわけではない。
参考文献
- 作者: W.アーヴィング,齊藤昇
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