日本は沖縄に何を負っているか?

 普天間基地の移設問題で沖縄県と国が論争と対立を繰り広げている。多くの内地の住民は補助金まみれの沖縄県の振舞いに眉をひそめているであろう。ましてや、中国との尖閣諸島問題で軍事衝突が懸念されているので日米安保の観点からも、沖縄県は譲歩すべきという論者も多かろう。
 さりながら、自分的には沖縄県民にどれほど多くを内地の住民が負い目があるかを顧慮すべきではないかと思うのだ。
 現在の政策論やゲオポリティクですべて内地の理屈を押し通すのは恩をアダで売り、浅はかで短慮だと思う。
 それは薩摩藩琉球王国を侵略し、収奪した時代から考え無くてはならない。どれほどの苛政だったかは谷川健一の沖縄モノを一読するだけで事足りる。
 収奪した富が薩長明治維新を起こす原動力の一つになったということもできよう。それはそれで内地民は沖縄に感謝するべき、あるいは陳謝すべき負い目である。

 それよりもいっそう過酷なのは太平洋戦争での沖縄戦だ。日本国として本格的地上戦に巻き込まれた捨て石。それも84日間ものあいだ、一般市民を巻き込んだ悲惨な歴史をどうわれら内地民は釈明すればいいのだろう?
 貴重な時間稼ぎのためだけに犠牲になった一般市民のことは、現代日本人は大して知りもしないでブーブー文句をいうことが、その歴史的倫理性の欠落を証明している。国体としての一体性を無視しているのだ。
 犠牲者の数はwikiによればこうだ。

 沖縄県外出身の正規兵が65,908人、沖縄出身者が122,228人、そのうち94,000人が民間人である。

 このような試練は歴史的想像力が欠けた現代の内地日本人には想像もできまい。
 現時のように沖縄に重要な基地があること自体、ふたたび戦場になりうることを意味する。つまり、沖縄戦のような一般市民を巻き込んだ悲劇を再現することになりかねない。基地負担は経済や犯罪だけの問題ではない。

 でもって、その責任者かつ当事者の一人である太田実海軍中将は自決前に後世の我らに何を言い残したか?

大田実中将の電文

 しかも若き婦人は、率先軍に身を捧げ、看護婦はもとより、砲弾運び、挺身斬り込み隊すら申し出る者あり。
 所詮、敵来たりなば、老人子供は殺されるべく、婦女子は後方に運び去られて毒牙にくみせらるべしとて、親子生き別れ、娘を軍衛門に捨つる親あり。
 看護婦に至りては、軍移動にさいし、衛生兵すでに出発し、身寄りなき重傷者を助け、あえて真面目にして、一時の感情に駆られたるものとは思われず。
.....
 沖縄県民斯く戦えり。
 県民に対し、後世特別の御高配を賜らんことを。

 この電文にはお決まりの皇国礼賛の美辞麗句がなく誠心誠意を吐露していたと言われる。
 軍人ですらこれほど悔いを末期に表明したのであるからには、後世の内地住民はそれ以上に沖縄県民に同情と共感をもって処さねばならないのではないだろうか?
 
 ましてや、時の官房長官や総理大臣の振舞いは中央の論理だけで動く短慮のヒトであり、過去の記憶をないがしろにする非倫理的な輩となじられてもしかたあるまい。

 それにしても、なんのための靖国参拝だか、本末転倒であろう。国民を守って命をかけた御霊を祀る場所で、その遺訓や目的を忘れている。形式主義もここに極まれりだ。