箒を逆さに立てる行為が客の去るようにするマジナイだという。ところで、石仏の一つの箒神というのがある。これが何故か箒を逆さに抱えている女性の神なのだ。「ははきがみ」とも言う。
かつてのホームドラマでは、ダメおやじが帰宅すると玄関にホウキを逆さまに持った家の神(カミ)さんが仁王立ちというワンシーンがあったものだ。
この神様は出産に立ち会うお産の守護の神だったようで、妊婦の部屋の片隅に箒を逆さに立てて、助力を祈った風習がある。箒神が箒をつたわり、部屋に降り立ち女性のお産を軽くするとともに丈夫な良い子を授けるとされた。
となると客に対しては去れというマジナイではなく、また来てくれという解釈もできよう。
「ははきがみ」の「ははき」であるけれどもアラハバキ神のハバキにつながる。吉野裕子の論説によるとハハキとは蛇を直立する木に見立てたともいう。出産と蛇というdeepな連関がかすかに見えてくる。
- 作者: 会田秀介
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