カオスの意外な語源

 カオス=混沌の意味の大本は、ギリシア語の「khasme」つまり、「あくび」である。「kha」とはクヮーと口を開けることである。河野与一はその随筆で書いている。

 更に、河野与一が言うにはヘシオドスの『神統記』の宇宙創生の「khaos」も、

始めにあくびいでたり

 であるというのだ。

 正統的な廣川洋一の訳では「まず原初にカオスが生じた」である。

 いやはや、河野与一は「あくびは伝染る」をアリストテレスの『問題集』に見つけ出してから、この暴走的発言に至ったようだ。



 こう云うタイプの学問的余白のある人物の本は、最近見かけないない感じがする。これも教養主義の衰退の現れであるか。役に立たない知識こそ大人を生みだすのだろうに。

新編 学問の曲り角 (岩波文庫)

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