カオス=混沌の意味の大本は、ギリシア語の「khasme」つまり、「あくび」である。「kha」とはクヮーと口を開けることである。河野与一はその随筆で書いている。
更に、河野与一が言うにはヘシオドスの『神統記』の宇宙創生の「khaos」も、
始めにあくびいでたり
であるというのだ。
正統的な廣川洋一の訳では「まず原初にカオスが生じた」である。
いやはや、河野与一は「あくびは伝染る」をアリストテレスの『問題集』に見つけ出してから、この暴走的発言に至ったようだ。
こう云うタイプの学問的余白のある人物の本は、最近見かけないない感じがする。これも教養主義の衰退の現れであるか。役に立たない知識こそ大人を生みだすのだろうに。
- 作者: 河野与一,原二郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/06/16
- メディア: 文庫
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