折口信夫の「貴種流離譚」あるいは、同じことだが「流され王」伝説と命名したのは柳田国男であろうか。
古代の関東では多くの渡来人が土着したことが知られている。下図を見られたい。
『古代の日本7 関東』(角川書店)より
国司である百済王たちは亡国の民であろう。一族を率いて未開の地である関東に移住してきたとみなせるのだ。
柳田が各地の伝説から拾い上げた「流され王」は渡来人の末裔が語り継いだ物語りでなのではあるまいか?
つまりは百済や新羅からの「王族」がその出自を伝承するうちに、敗残の貴種への口承が知らず知らずに民間伝承になってゆくのだ。
古くは大友皇子の伝説は鹿児島県にも千葉県俵田にもある。平家の落人伝説、義経や豊臣秀頼、西郷隆盛にいたるまで、流浪する英雄の不滅さにもそれが残存すると言えはしまいか?
柳田の「流され王」はこのなかの一篇である。
- 作者: 柳田国男
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2013/01/25
- メディア: 文庫
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