正岡子規の病床

 正岡子規は俳句の世界に変革を起こしたこと以上に、その病床文学で顕彰されるべきだと自分などは思う。
 それまでは健康で新聞記者として思う存分の行動をとれた人が脊椎カリエスを病んでほとんど寝たきりとなりながら、旺盛な食欲と好奇心を発揮する。
その痛みは尋常ではない。だが、その行動半径わずか数mの世界で鮮やかな晩年を走り抜けた。
 寺田寅彦は子規の日記を読みながら、その食生活に感嘆している。病床からの草木の眺めを写生している。天井を見上げながら日本の俳壇をどうするか、日本の行末がどうなるかを考えている。
 まさに大いなる明治人というべき大病人だったのだなあ。

仰臥漫録 (岩波文庫)

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