日本民族の命運の幻視

 少子高齢化だの人口減だのが日本に起きている。先進国共通の現象だが、日本においては一際迅速に進行している。
 直近20年の日本の人口の趨勢からすれば、遠からず日本に周辺民族が押し寄せよせてくる。今世紀中盤以降はそうなろう。
 だけれども希望を失うほどの出来事ではない。
 日本人の多数者には気に食わない発言だろうが、それは史上初めての出来事ではないからだ。


 かつて加藤周一が『雑種文化-日本の小さな希望-』で指摘したように日本の近代の勃興は、雑種性にあったのだ。
 もう一つ、重要な先人のメッセージを付け加える。柳田国男翁が夢想したように日本人の祖先はくろしおにのって、琉球弧から北上してきた。柳田翁は過去を幻視しつつ、日本の行く末も透視していた。
 かつて起きたことは将来にも起きる。
 考古学が立証し、分子遺伝学が裏付けたように、ウラル・アルタイの血筋も半島経由でなだれ込んできた(弥生時代以降)。中国系よりは朝鮮系と血縁的に日本人は近しいとされる。
 それに源流は不明だが、アイヌの血筋、もしくは縄文系も日本人には少しは流れている。こうした混血が日本の有史以前から幾度か発生してきた。

 再度、遺伝子の混交が起きるだけのことだ。
 いま、火山列島の天変地異の到来の気配がある。その到来とともに、民族の境界は崩れる。世界秩序という共同幻想は解体するだろう。国境や民族などは西洋文明が持ち込んだ、その代表例でしかない。
 そもそも「近代」の秩序なんて、たかだか100年くらいの履歴しかなく、これからも続くというのは儚い幻想というべきだろう。
 
 ある意味、それは始まっている。
 それは「トキ」で起きている。日本「固有種」の朱鷺は死滅し、中国大陸由来のトキが繁殖をはじめているのだ。これは先駆現象ではないだろうか?


 八十近い老翁の渾身の作。柳田翁は歴史の彼方を幻視した。

海上の道 (岩波文庫 青 138-6)

海上の道 (岩波文庫 青 138-6)


 戦後間もない頃に加藤周一は「希望」を雑種性に託したことを想起せよ。

雑種文化 日本の小さな希望 (講談社文庫 か 16-1)

雑種文化 日本の小さな希望 (講談社文庫 か 16-1)