西洋の歴史の厚みを感じる

 辻邦生の名作『背教者ユリアヌス』で悲劇的英雄ユリアヌス皇帝をご存知の方も多かろう。ギボンが大絶賛した一大の麒麟児である。ローマ史上にひときわ輝く新星であった。
 コンスタンティヌスによるキリスト教の国教化に対して、異教復興を掲げ短期間ながら華々しい活躍をした青年皇帝に好意を持たないでいるのは難しい。
 ところで、その死後、ローマというかヨーロッパ世界は全面的にキリスト教化に向かう。
ユリアヌスがその短い余暇にキリスト教論駁の書、パンプレットをモノしているのは、その伝記にも記されている。それが、あの中世を乗り越えて、かなりの量が残されているのは、驚きである。
 『ミソポゴン』(髭嫌い) 、 『皇帝饗宴』(皇帝伝)、 『ガリラヤ人どもを駁す』(ガリラヤ人論駁)、
『王なる太陽への賛歌』などが代表作である。
 やはり西洋は分厚い伝統というものがあるのだなあ。


 しかも、下記から簡単に入手できるようになりました。

 ユリアヌス著作集pdfのリンク
『The works of the Emperor Julian Vol.1』(原著英訳版)



辻邦生の著作

背教者ユリアヌス (上) (中公文庫)

背教者ユリアヌス (上) (中公文庫)