ヤキ・インディアンのドン・ファン・マトゥス、不在の呪術師の語りを通じてカルト的熱狂を生み出したカルロス・カスタネダ(Carlos Castaneda)。
Time誌の表紙となった。そのドキュメント「ドン・ファン」シリーズは、文化人類学のフィールドワークとして当初考えられていた。
アメリカインディアンの秘教的な伝統が多くの人びと、とくに若者たちを魅了した。
今日では、多くの部分が作り物らしいことは確実とされる。宗教的伝統の巧妙な捏造というべきモノだった。
しかし、この手の「語り部」は詐欺師であり、壮大な神話的な物語の紡ぎ手であるのは、これも文化的な伝統ではないかと思う。彼自身が壮大なホラ吹きであり、善悪を超越する小悪魔であり、文化の救済者なのだろう。
つまり、トリックスターなのだ。
自分はこの稀代の語り部に十分、共感できる。
柳田國男翁が「烏滸の文学」の衰退を嘆いたが、「ドン・ファン」シリーズこそは無数の善男善女を巻き込んだ烏滸(おこ)の文学である。
あり得もしない教えが面白きこともないアメリカの乾いた大地に君臨したのだ。その法螺の壮大さには敬服しないわけにはいくまい。
いや、多数の人が信じたがゆえに、もはや法螺ではなくなっていたのだ。
カウンターカルチャーの思想的な代表であるローザクによるカーロス・カスタネダのラジオインタビュー
BBCのドキュメンタリー(2006)
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