ウォークマン→iPod→iPhone

ソニーの凋落がビジネスマンの話題となっている。
直接の原因や間接的な遠因はどうあれSONYのいるべき場所にサムスンがいる。あるいはAppleがいる。だから、サムスンやAppleになれなかったのだ。とくにAppleにはなろうとしても無理だったろう。
 その居場所は彼らが開拓したものだ。
けれどもウォークマンが築いた土台のうえに彼らが新たなビジネスモデルを上乗せしたことも事実だろう。引退したストリンガー卿(貴族(ナイト)の称号があるのだ)もAppleのiTunesには、幾度と無く臍を噛んでいたという。
 モーバイルなコンテンツ再生機器を最初に生み出したのはソニーなのだ。その成功がソニーの令名を確立し、その衝撃が大きかったことは音楽ビジネスが大きくレコード業界の独占、マスコミの占有から離脱したことでもわかる。
 その成功は大きすぎた。
 それ故に、ネットワーク化とデジタル化の波には乗り換えるのには躓いた。
 音質へのこだわりはマイナス要因、著作権へのハードネゴシエーターとならずに既存の事業の枠組みで終始しようとしたことでもマイナス要因となったあげくの当然の結果だろう。

 iPodはその行き詰まりを完全に打破した。安っぽいMP3プレイヤー(韓国のメーカーがパイオニアだったのだ)を絶滅においやり、ウォークマンの存在をカスレさせた。使いやすさや品質だけではなく、ユーザを完全に掌中に丸め込む仕組みをつくった。コンテンツのユーザ志向の究極というべきものだろう。

 2001年にiPodは誕生した。9.11の週に発表された!
 当時、それが世の中を塗り替える製品だとは誰も考えもしなかった。しかし、数年後にはiPodが自宅のAV機器やリスニングルームをそのままアウトドア化できる恐るべきデバイスであることが消費者をトリコにした。

 2003年にはiTunesミュージックストアを開設。大成功を収める。
 Napsterの正式なしかも合法的な資産後継者となる。
 既得権益にこだわる音楽業界を切り崩したのはジョブスだ。彼は消極的な音楽業界のお偉方を口説き落とす力を有していた。
 これがコンテンツのネット化への王道を拓く。2010年にもなるとCDショップはほぼ淘汰され、同時に「アルバム」も死語になりつつある。不要な曲まで買わされるアルバムは無用の長物となのだ。
 恐ろしい速さで世界が塗り替わるのだ。

 ウォークマンはメディア革命の初代のヒーローだった。だが、それはより革新的な革命の子どもたちによって乗り越えられてきたのである。SONYは先導者であり、その存在は乗り越えられた。
 次の一手はどのようなものとなるだろう? 誰も知らない。音楽はアルバムとジャケットを脱ぎ捨てた。専用の再生機はマニアのものとしては残るが、現代人はiPodとパソコンで十分だ。コンテンツの種類に端末は拘束されない。
 となると「再生端末」は何かの一部に取り込まれることになるだろう。確かに、iPhoneはその一例かもしれない。通信できれば「再生端末」はその一部としてあれば良いからだ。
 つまりは、通信できるワイヤレス、しかもいつもネットワークにワイヤードされた、そうした世界が開けている。つまりは、人々は漂流民となるが故にそれはストリート仕様となるのだ。


iPodは何を変えたのか?

iPodは何を変えたのか?

SF作家のウィリアム・ギブスンウォークマンを初体験した話がイイ。どんなVRよりもリアリティを感じたのだとか。