20世紀前半、とくに1930年代のポーランド数学の勃興は孤絶した歴史現象かどうかを、かつてテーマにした。その特技であった「暗号解読」の伝統についてもどこかで触れた。
ドイツの誇る暗号エニグマ解読には連合国イギリスに非常な貢献をしている。
「コロッサス」はイギリスのエニグマ解読機だが、「サイクロメーター」がその前身としてしてあるのは間違いない。マリアン・レイフスキが開発した。彼はもとはポーランドの保険会社に勤める統計学者だったそうだ。
日本に暗号解読技術を植えつけているのも盟邦ポーランドであった。盟邦というのは、お互い敵対するソ連にたいして、両国が親密な関係を結んだのだ。
『暗号事典』によれば情報将校=暗号専門家コワレフスキーは1920年代に来日し、ソ連の暗号解読について日本陸軍にその知見を提供している。ポーランドはソ連とドイツという大国に囲まれて、危機感が半端ではなかったのだ。暗号解読は国運を賭した事業だったのである。つまり、暗号技術先進国であったのだ。日本はそれを知っていた。
エニグマに関する情報は日本には伝えていない。時代が下って1930年代には日本はポーランドの敵国ドイツに接近していったからだ。
前回にも述べたがポーランド科学は両大戦間に顕著な発展をした。統計学や論理学でも著名な功績が残されている。不思議なことに論理学(ポーランド学派!)が暗号と関係がある。
別の歴史書によれば、クラクフのヤジェロニアン大学哲学科の記号論理学専攻は暗号専門家を輩出しているそうだ。統計学が暗号解読に密接な関係をもつのは言うまでもない。
例として、ネイマンという統計学者はピアソン学派としてイギリスで有名になった。彼はポーランド人だ。統計学についてもポーランドは大きなポジションを占めているのだ。
志賀浩二氏による「無限への憧憬」としてのポーランド数学は戦争への危機感のなかで育まれたのだろうか。ここはもう少し情報を集めてみよう。
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