「終戦」から1ヶ月ほどたったある日、すなわち1945年9月27日。
敗戦にあえぐ国民には極秘裏に昭和天皇は私的にGHQのマッカーサー元帥を訪問する。
これが戦後の一区画となる、GHQの間接統治と天皇の人間宣言の布石であった。
この場において何が話し合われたか、は公的には明らかにされていない。ただ、数日後のの新聞の一面をかざった、其の会見後のマッカーサーと昭和天皇のツーショットは、克明に民衆のこゝろに焼き付いた。
以下のようなマッカーサーの回想が残るとされている。これが準公的な記録だろう。
「天皇の口から出たのは、次のような言葉だった。「私は、国民が戦争遂行にあたって政治、軍事両面で行なったすべての決定と行動に対する全責任を負う者として、私自身をあなたの代表する諸国の裁決にゆだねるためおたずねした。この勇気に満ちた英雄的態度は、私の骨の髄までもゆり動かした」
天皇は命乞いをするどころか、戦争遂行の全責任を負おうとする潔さを示したため、マッカーサーは感動したことになっている。
それは捏造された美談であることが分かっている。それを真に受けたシンプルな人びとのブログが山ほどある。お互いの権力と権威のための高度な政治判断なのだ。
そして、このあと天皇の戦争責任問題、これは諸外国の世論が一貫して要求していたのだが、それは東条英機の戦争責任と事後審判の平和に対する罪にすり替えられてゆく、
もちろん、それが可能だったのは連合軍の占領に際して、大した混乱なく占領軍に権力移行が行われたことが、大きいとされる。
この会見での実際的内容はほぼ出来レースだったとされる。それでも、A級戦犯をでっち上げるという、なかなか綱渡り的な出来レースだった。アメリカ国民など勝者側ではヒトラーやムッソリーニのような生贄の羊をもとめていたからである。
この会見での昭和天皇の発言はこちらの奥村勝蔵の手記に近いものだったとされる。それが幾多の伝言ゲームにより変形してしまったというわけだ。
コノ戦争ニツイテハ、自分トシテハ極力之ヲ避ケタイ考デアリマシタガ、戦争トナル結果ヲ見マシタコトハ、自分ノ最モ遺憾トスル所デアリマス
確かに、こちらのほうが、自己判断をせずに「輔弼」による君臨をしてきた人物の発言らしい。自己責任で米国に宣戦布告したなどという明確な人物は極東軍事裁判の被告には一人もいなかった。それが日本人というものだろう。丸山真男が皮肉ったような支配者層の日和見主義は、度しがたいものだったのかもしれないが、それが集団主義的大和魂というものだ。
東条英機たちに詰め腹を切らせる、というが連合軍首脳と日本の統治者たちの妥協点であった。東条英機も宣戦布告は自己の決断ではないと知りつつ、マッカーサーらの意を汲んで期待された戦犯役を買って出たわけである。
こうして連合軍の統治方針は固まる。
東京の軍国主義のギャングたちが息絶え、日本軍が破壊され、リベラルな政府が天皇の下に樹立されたとき、悲しみを深め、人数も減りはしたが、より賢明になった日本人たちは、生活の再建をはじめることができる。
真珠湾攻撃のだまし討に始まる大日本帝国の軍部の暴走が悪の根源であるという歴史的シナリオが、多くの日本人が今でも信じているシナリオが書かれ、それに従った演技が東京裁判で正義の裁定パフォーマンスとして実演されるのだ。善良なる国民たちも軍部ファシストに騙されていたというのだ。
けれども、少なくとも日米開戦を後押しし、よろこんだのは「善良なる国民」たちであったことは思い出す価値がある。メディア統制がその一因であったのは為政者たちの自業自得であるのかもしれない。
思うに、ほとんどの陸海軍の指導部は誰も米国と対戦して勝てるとは考えていなかったことが判明しているのだが。天皇制と軍部を切り離すことで戦後日本のあり方をマッカーサーたちはモデル化したわけだ。
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