膨張中国と共闘する酔狂さ

 中国首脳が北朝鮮を差し置いて韓国をはじめて訪問して、韓国大統領と友好的に会話し、挙句の果ての共同声明を出した。
 時代は踊る、だ。

 調べてみたら、中国の隣国は押しなべて反中国的な姿勢に変貌している。
 北から始めよう。
 モンゴル共和国。資源を輸出する先が中国であるにも関わらず、モンゴルは反中国的な国民感情が渦巻いている。wikiにその対中感情の記載があるのが証拠となろう。
 北朝鮮核兵器開発をめぐり、不協和音がかつてないほど高まっている。モンゴル同様に資源を中国にいいように牛耳られているのが、原因の一つかもしれない。
 この二国においては、政府も国民も中国の貪欲な資源搾取に対して、警戒心を持っているのが伺われる。
 さて、南側の隣国ベトナムでは先月、中国企業に対する攻撃的なデモが起きて話題になった。フィリピンはバナナなどを輸出制限されて、中国にいたぶられている。ベトナムもフィリピンも南沙諸島が問題になっている。
 インドはライバル感情をはむき出しにしている。かつてはカシミール問題で中国と紛争を起こした。
 台湾も例外ではないようだ。中国人の多い台湾では中国との協定に反対して学生が国会占拠したばかりである。
 こうしてみると、例外はロシアと韓国だ。
プーチン大統領は中国との領土問題は決着済み(先見の明がある)なので、余裕綽々なのであろう。だが、外交では中国と距離を置いていると専門家筋は評価している。

 というわけで、素人眼でも隣国はすべて中国に対して経済関係は保つが、友好的な関係を保てなくなっているのは明々白々だ。それに逆行する韓国外交の無謀さというか、空気を読めないインテリジェンスには首をかしげる
 韓国は北朝鮮という緩衝国があるから、友好さを演出できるのだとしか思えない。
 巨象が身震いすると周りの小動物は大迷惑を被るの図式そのものだ。

 中国の共産党支配そのものについては、多くの識者は先行き不安を表明している。ジョージ・フリードマンは「アメリカへの次の挑戦者は中国ではない。中国は本質的に不安定だ。」と『100年予測』で主張する。
 スーザン・シャークという中国研究者は「天安門事件」の深刻な後遺症が中国首脳につきまとい、その政治的判断を左右しているという。「改革・開放」路線は共産党支配を破壊するというのが、天安門事件の教訓であり、軍による国家統制、国民支配を強化する道を訒小平の後継機たちは否応なく選択せざるを得ない状況にあるとする。
 人民解放軍とは名ばかりになっているようだ。
 スーザン・シャークによれば台湾と日本、そしてアメリカが彼らの対外戦略のすべてを規定する。それはいずれも人民解放軍中国共産党の鬼門になるのだ。この三カ国との関係が未来を決める。
 共産党人民解放軍の忠誠心に依存する権力構図を今後とも進めるしかない。つまり、軍事的な衝突は長期的に避けられないし、それが中国政府の屋台骨を揺るがす大事件になるのもかなり確実である。

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【参考書】

 意外にもこの本では日本の台頭を警戒している。

100年予測 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

100年予測 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 政治家たちの行動原理を精密に組み立てて予測している。東欧の共産党支配の瓦解、ソ連の分解と共産党支配は四分五裂の流れで「天安門事件」は起きた。そして、2010年代、中東でもジャスミン革命という自由化の流れで混乱が広がっている。
 中国の崩壊で一番、困るのは日本、次いでアメリカであることは認識しておく必要がある。

中国危うい超大国

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