ゾウのいた頃

 かつては世界中のいたるところにゾウがいた。シベリアのマンモスは言うに及ばず、南北アメリカにも、中国大陸にも、日本にさえナウマン象がいた。
 ゾウの生存圈の消失は人類の増長と比例するように続いている。
 有史以降、ゾウの消えた場所としては北アフリカがある。ハンニバルが戦象を連れてアルプスを超え、ローマを脅かす話は著名であるが、その象は北アフリカ象である。
 各地の個性的なゾウが消えたのは、間接もしくは直接的に人の活動のせいであろう。それはこの数万年間の巨大な趨勢である。西洋文明とか近代技術とか以前の話であると思う。

 象は動物園の人気者である。
 神戸の諏訪子の生涯は人の一生のように語られるし、第二次大戦中の上野動物園の餓死させられた象の話は涙を誘う。
 戦後にインドから贈られたインディラやはな子のエピソードもある。
 海外でもジャンボという巨象の存在は有名であった。ディズニー映画の『ダンボ』にもその余韻が残る。

 小原秀雄氏は、日本における野生象の保護活動にうちこんでいる動物学者である。
彼の著書は忘れがたいものがある。森のゾウであるマルミミゾウについては彼のジュニア新書で学んだ。
 井尻正二氏はナウマン象の宣伝をして、一世を風靡した。野尻湖の化石研究の井尻だ。

ゾウの歩んできた道 (岩波ジュニア新書)

ゾウの歩んできた道 (岩波ジュニア新書)

マンモスの謎

マンモスの謎

象のための闘い

象のための闘い

ハンニバルの象を専門に扱う書もある。著者は進化論の研究家でもある。

アルプスを越えた象―ハンニバルの進攻

アルプスを越えた象―ハンニバルの進攻

少年向けの小説までも翻訳されている。

ハンニバルの象つかい

ハンニバルの象つかい

 海外の象の古典を紹介しておく。いずれも無料だ。
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 最後に謎の怪著をリンクしておくとしよう。常人には入手困難であり、自分も読んだことすらないが、こんな世間離れした書籍をつくる怪人もおった(1931年のことだ)ということをしたためおきたい。

象 (1931年)

象 (1931年)