フランスの郵便配達夫の建築した「シュヴァルの理想宮」とディズニーランド(TDLでもよい)との同質性と差異について考えてみようではないか。
「シュヴァルの理想宮」は一人の人間が自分の理想的建築物を地表に現出させようと、たった一人で創り上げた。ディズニーランドはビジネスマンが大衆に夢を与えようと大量の資材と人員を動員して作り上げた。
両方とも実在しないものをモデルとしている。
片や無償で何も求めない施設となり、他方は有料で多くの人々を集める集客施設だ。片や自分の夢のためだけ、他方は自分の夢と考えるものを人々に分与しようしている。
片方はサービスも説明もないが、他方は感動体験を与えると称して衣食住を囲い込もうとしている。
大衆はディズニーランドを圧倒的に指示しているが、それは消費社会の象徴的モデルとなっている。それは同じ体験を大量に生産する。
ボードリアールの言うには「ディズニーランドとは、アメリカ全てがディズニーランドなんだということを隠すためにある」
それは消費社会に蔓延したものなのだ。娯楽の大量生産工場としてある。
シュヴァルの理想宮は一部のマニアにしか知られていないが、しかし、そのフォルムは十分に感銘を与えるものし、すぐれてパーソナルなのだ。
ひとつ言えるのは千年後にはディズニーランドは存在しないだろうということだ。廃墟として残されているかもしれないが、その含意は未来の人々には理解できないものとなっていよう。
シュヴァルの理想宮も理解できないものとなっていよう(現代人でも理解できない)しかし、その不可解さはアンコール・ワットやパレンケの遺跡のように畏敬を与えるものとして未来の人々に受け入れられるであろう。シュールレアリストであるアンドレ・ブルトンの反応がそれを物語っている。
- 作者: 佐藤健寿
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