独裁制と飢饉

 少なくとも民主制統治下では大規模な飢餓は発生しえないとどこかの歴史家が書いていた。
 あの恐怖政治で有名なフランス革命期は一応、議会制民主主義であった。確かに飢えは起きたが餓死者続出ではなかった。

 ロシア革命共産主義中国の統治下は、いずれも悲惨な飢饉が発生している。どちら様も数百万規模で餓死者を生み出した。これは明らかに人民に対する裏切りであるのだが、為政者は事実を隠し通して自己正当化を図った。
 ジャスパー・ベッカーの『餓鬼』は赤い人民の国、中国の無様な農業政策をあからさまにした。ソ連の粛清は自分には既知であったけれど、中華人民共和国も同じ穴のムジナと知れた。
 毛沢東主義スターリン主義に染まった1960年代までの左翼系の人びとは完全に裏切られた。

 これまでと論点は同じだ。
 チェック機構がない統治は非理性化権力装置として暴走する。
 スターリン毛沢東も批判や非難は寸分たりとも許容しなかった。それを敢えてすれば、「反革命分子」と名指しされ収容所送りか、粛清かだ。自己正当化に専念する独裁者サマサマだ。
ナチや後半の大日本帝国も同じような有り様であったけど。
 権力一極集中がどれほどの愚行かを物語るではないか。


ソヴィエトの悲劇〈上巻〉―ロシアにおける社会主義の歴史 1917~1991

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餓鬼(ハングリー・ゴースト)―秘密にされた毛沢東中国の飢饉

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